2018年12月20日木曜日

0157−58 トランク・ミュージック 上・下

書 名 「トランク・ミュージック 上」「トランク・ミュージック 下」 
原 題 「Trunk Music」1997年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 (1998/6/1) 
初 読 2018/12/20 


 戻ってきたボッシュ。しかし、彼の女運の悪さがにじみ出るようなこの巻。
 有能な新上司(女性)、有能な新部下(女性)に恵まれ、嬉しくなったのもつかの間、悪運としかいいようのないかの女が再登場。なんでこんなのに未練抱いてるンだよ〜。あんたはちっとも悪くないぞ。なんだろ、世の女の不幸は全部自分のせい、みたいな腐れたロマンチシズムを感じるぞ。目を覚ませ!その女に近寄るな!

 なんていってもしょうがないか。なにしろ、今月発売の最新刊ではマディが大学生になってるんだからな〜。最新巻読みたいのをぐっとこらえて、刊行順。

 ボッシュは家を建て直してウッドローウィルソン・ドライブに戻っている。カーウェンガ・パス、マルホランドドライブなんて地名や道路名に血が騒ぐ。グーグルのストリートビューでウッドローウィルソン・ドライブを走って、ボッシュの家の場所に当たりをつける。(ついでに、コールの家も探してみる。)
 ハリウッド・ボウルから聞こえてくる音楽は、ボッシュの幼少時の思い出を喚起 する。
 それにしても、今回の殺人現場は、ボッシュの家から車で15分とかかるまい。殺人多発地帯である。

 だが、一番の事件は メイクラブがついに「愛を交わした」に進化したことだ!

 それにしても、いや〜今回もまた波乱万丈な事で。今回も失職すれすれでひやひや。これが自分の身に起こったら絶対鬱になる。やっぱりハリーはタフだ。
 後半、筋が込み入ってきてだんだん自分が理解できているのか分からなくなってきた。FBIリンデルは良い味出してる。そしてエレノア。だんだん良い女に思えてきた自分が、なんだか悔しい。いーや。あの女はダメなやつだ。私は騙されないぞ!

《追伸》 「ナイトホークスの複製画が欲しいのだけと壁と金がないの(T ^ T)

2018年12月14日金曜日

0155−56 ザ・ポエット 上・下

「ザ・ポエット 上」書 名 「ザ・ポエット 下」 
原 題 「THE POET 」1996年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 (1997/10/1) 
初 読 2018/12/14 
 

マイクル・コナリー完全制覇計画 前半の壁。ここを超えないと先に進めない。
何しろコナリーは刊行順!がお約束。

 殺人事件を追う刑事であった双子の兄が死んだ。本当に自殺なのか?兄を失った新聞記者ジャック・マカヴォイが主人公のノンシリーズもの、とはいえレイチェルも登場し、何しろ犯人はポエットだし。上巻から登場している変質殺人者が犯人のわけなかろう。どこにいるんだ、真犯人。
 だがしかし。
 くぉんのクソ馬鹿野郎があああ!とジャックのスタンドプレーに激怒。とにかく主人公ジャックがどうにもいけ好かないが、きっとコナリーもいけ好かれる主人公を書こうと考えたわけじゃなかろうから、致し方ない。小児性愛者によると見られるばらばら殺人事件とその周辺で起こる警察官の「自殺」はどちらが主でどちらが従なのか。犯人は同じか別々か。怪しい登場人物は怪しすぎるのではなから除外。真犯人ポエットはだれだろう?

 忘れたと思っていた「メイクラブ」に「うんにゃ」も登場。こちらもいい加減にせい! 
 それにしてもいつも思うのだが、どうしてコナリー作品のヒロインはこうも魅力的で無いのだろう?いっそのこと、女なんて出さずに男臭くやればいいのに。

2018年12月7日金曜日

0154 夜明けのフロスト  ジャーロ傑作短編アンソロジー③

書 名 「夜明けのフロスト 」 
著 者 R・D・ウィングフィールド 
翻訳者 芹澤 恵 
出 版 光文社 (2005/12/8) 
初 読 2018/12/07 

 ダグ・アリンを求めて入手。そしてフロスト一気読み。こういうの、なんていうんだっけ、ミイラ取りが・・・、飛んで火に入る・・・、いや、毒をくらわば皿まで! お下品、お下劣、下ネタ満載、との読み友諸氏のレビューに手を出しあぐねていた御仁だが、いやはや、面白いじゃないか。もー、好きになってしまったよ。こういうおっさん大好きだ。こりゃ読むしかないね〜。そうして、また、積読山の標高は高くなる。

2018年11月26日月曜日

0153 EQMM90年代ベスト・ミステリー 双生児

書 名 「EQMM90年代ベスト・ミステリー 双生児」 
出 版 扶桑社 (2000/9/1) 
初 読 2018/11/26 

1ダヴィデを探して ひとつ聞くがね。それは難しい問題なのかね?マッドよ? 

2 双生児 兄はADHDタイプ、弟はアスペルガータイプかな、と思うた。最後まで皮肉。 

3金儲けの上手い奴は頭が良いんだと、気づけないところが所詮は・・・ 

4ヒコーキ事故の話。短編らしく、捻りはない。捻れているのは航跡だけだな。 

5動いているハーバード 流石のランキン、面白い! リーバスの続きを読まなくては。

6ヒマラヤ杉の野人 ダグ・アリン すっごく良かった!読み応え抜群。これは、他の著作も探さなきゃ

7善行 お母ちゃん・・・ 

8 つぎはお前だ この余韻はたまらない。 

10クリスマスの正義 
良い話ダナー。クリスマスの誰かを幸せにしたくなる、よくわからない空気感がふんだんに。 ラスト1話でなんだか良い話を聞かされたような気にさせられて、若干面白くない気がするのは私がひねくれているからだろうか。

2018年11月25日日曜日

0152 その雪と血を

書 名 「その雪と血を」 
著 者 ジョー・ネスボ 
翻訳者 鈴木恵 
出 版 早川書房 (2018/11/20) 
初 読 2018/11/25 

 言葉が、白い雪の結晶のように降り積もる。人生の何かが欠けていると分かる男の一人語り。欠けているのは愛か、希望か、未来か、世界そのものか。
 オーラヴが綴る言葉は、雪のひとひらのように脆く、儚い。それは彼が綴っていたのが現実と、彼の「物語」を行きつ戻りつしているからか。オーラヴの「物語」のおかげで、とことん救いが無いのに、どこか救われたような気がしてしまう。せめて、オーラヴ自身が救われたことを願う。それにしても、早まった。クリスマスに読めば良かった。

2018年11月24日土曜日

0151 ミスコン女王が殺された

書 名 「ミスコン女王が殺された」 
著 者 ジャナ・デリオン 
翻訳者 島村 浩子 
出 版 東京創元社 (2018/9/20) 
初 読 2018/11/24 

 あああ面白い!乞う続刊!カーターとも良い感じだし、これはロマンスになるのか?私としてはロマンスより腕比べのほうが期待値高いが。フォーチュンとカーターがお互いに背後を守りあうシーンを想像してドキドキしちゃうね。フォーチュンがばあさん二人に対してかなり口が軽いのが残念だが、まあ、素性を知られてるしな。母の思い出や、父との確執がこのヘンな田舎町で溶けていくのか。そんな彼女は果たして本職に復帰できるのか。まだまだ10作くらいあるらしいけど、ちゃんと邦訳してくれるのか、創元!よろしく頼みます。

2018年11月22日木曜日

0150 ワニの町へ来たスパイ

書 名 「ワニの町へ来たスパイ 」 
著 者 ジャナ・デリオン 
翻訳者 島村 浩子 
出 版 東京創元社 (2017/12/11) 
初 読 2018/11/24 

 面白ーい!女の一人称で面白く読めたのは久しぶりじゃ。なんつーかジェントリーを女にして、ねじを1本2本抜いたらこんな感じか?
 おばあちゃんたちがこれまたイカす。これ、上司のモローとこのおばあちゃんたち、実はかつての戦友、とかそういうオチはないよね。それにしても恐るべしルイジアナ。3メートル長のワニが悠然と共生して、泥臭く、ハリケーンでは水没し、死体は漂流し、ばーさんは凄腕スナイパー。(笑)「栄光の旗のもとに」→「死者の河を渉る(ロバート・クレイス)」→この本とどんどんルイジアナのイメージがヘンになっていくぞ。ルイジアナは、米国の小説家達にとっても魔境なのか??ってか、在住してるのか。そういや、ドッドソンもケイジャン料理作ってたよね〜。何はともあれ、バナナプディングを食べたい。

2018年11月18日日曜日

0149 働く女子の運命

書 名 「働く女子の運命」 
著 者 濱口 桂一郎 
出 版 文藝春秋 (2015/12/18) 
初 読 2018/11/18 

 この著者の本を3冊続けて読んだが、同じジョブ型、メンバーシップ型雇用を取り扱いながら、若者、中高年、女性と切り口を変え、それぞれ新しい発見があった。3冊分のまとめとしてかなり長いが考えをまとめておく。

① 世界標準の職務給ではない家族給・生活給という給与形態を日本の産業界と労働運動が手を携えて成立させてきた過程と、日本の雇用の姿(その中で女性の労働がどのように変遷してきたか)を確認。こうして戦前から現在に至る雇用の形や法制を見ると5年10年単位で世の中の意識が結構ダイナミックに変わっていくものなのだと知った。

② 生活給としての年功序列賃金が戦前の国家社会主義の勤労報国の形を雛形としているとか、日本のマルクス主義経済学と生活給の怪しい関係とか、日本の労働運動がむしろ女子差別と表裏の関係にある年功賃金を助長する働きをしてきたとか。社会主義ならぬ会社主義とかバッカジャネーノ?また70年代以降の知的熟練論についてはその論客である小池氏の理論があまりにも馬鹿っぽいが、原文に当たらずに批判をするのは他人のふんどしで相撲取るようなものなので控えておく。それにしても気持ち悪い歴史が盛りだくさんだ!

③ 80年代以降は自分の記憶にも残っている。90年代、平成不況到来で非正規化する男性労働者が増大して非正規雇用の問題が拡大する一方で、これまでの「一般職(=職場の花)」は募集そのものが無くなり、その業務は安価な派遣社員に移行。少子化ショックが育児休業充実の原動力となるが、なし崩し的に問題が少子化や非正規雇用問題に遷移する一方で、働きつづける女性の出産年齢の上昇も課題。

 最後に著者からの問いかけ、「マタニティという生物学的な要素にツケを回すような解が本当に正しい解なのか」に対する、私の回答は以下のとおり。 

 ジョブ型への移行は、社会保障のあり方と表裏一体であること。
 同一労働同一賃金を実現するためには、給料から生活給の部分をそぎ落とし、職務給として純化していく必要があるが、その為には次世代育成すなわち中長期的な社会の維持発展に要する費用を給料から切り離す必要がある。これらの費用は公的に負担され、その社会のメンバー(もちろん会社も含む)が税金という形で公平に分担することになる。(著者が引き合いに出すEUなどでは、むろん、子育て手当や教育無償化は充実している。) 
 健全な次世代の育成は社会が維持発展するために必須であり、その負担は社会全体で賄う必要がある。この点を明確に要求して実現させるのとセットにしない限り、今の日本の社会システムの中では、ジョブ型や職務給導入の議論は意味不明なものになりかねないだけでなく、単純な低賃金化や労働強化に繋がりかねない。
 ごく単純に考えて、子育てと教育に要する負担が社会化されれば、あとは自分の再生産費だけを稼ぎ出せば良いので、同一労働だろうが同一労働力だろうが、同一賃金を導入できるし、そのときには、女性はもっと働きやすくなるだろう。

2018年11月15日木曜日

0148 日本の雇用と中高年

書 名 「日本の雇用と中高年」 
著 者 濱口 桂一郎 
出 版 筑摩書房 (2014/5/7) 
初 読 2018/11/15 

 自分が労働環境や条件に希求するものが、おおよそ日本の労働行政(国)が進もうとしているものと時代的にも内容的にも軌を一にしていたことに、軽く衝撃を覚えた。
 前著「若者と労働」で縦型「メンバーシップ型」と横型「ジョブ型」の労働類型を分かり易く説明してくれたが、今著では、特に中高年に焦点を当てつつメンバーシップ型の弊害を読み解いていく。
 自分が居心地が良いと感じさえする会社のありようが本質的に過酷なものであることを、噛んで含めるように、教え諭すような本。
 取り敢えず読んでみてくれ、と特に同年代に勧めたい。
 長く生き、長く働くには、どうしたら良いのか。
 メンバーシップ型の無軌道な服従の要請に応え続けることはせず、右肩上がり賃金にはある程度のところで見切りをつけ、ワーク・ライフバランス重視の生活を取り戻し、などなど。
36協定よりも11時間インターバルの方が大事。60歳で定年したのち低賃金で継続雇用するよりは、中高年でももっと若く、柔軟性もあるうちに、働き方を変えて70までは働く。どれもとても重要なことに思える。

2018年11月3日土曜日

0147 若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす

書 名 「若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす」 
著 者 濱口 桂一郎 
出 版 中央公論新社 (2013/8/10) 
初 読 2018/11/03 

 
 欧米型労働類型であるジョブ型労働社会と、日本型労働社会類型であるメンバーシップ型労働社会の対比とその異質性に関して詳細に述べられている。
 メンバーシップ型(言い換えれば終身雇用・年功序列賃金体系)は、仕事に最適な能力を持つ人を採用してその仕事に貼り付けるジョブ型に対し、まず人を確保してからその人に社内で仕事を貼り付ける。一方が職から職に人材が移行する、横流れの構造であるのに対し、一方は「入社」から「定年」まで縦に流れる構造。不況時に、ジョブ型では若年者失業者が社会問題となるのに対し、かつての日本では中高年の失業者対策が、労働施策の中心となっていた。
 それが変化してきたのは1990年代の不況に労働市場が急激に縮小し、企業に収納されきれない新卒者が出現してきたから。それでもフリーターと呼ばれた彼らは「(会社という)束縛を嫌う自由で気ままな若者」というレッテルのもと問題が矮小化されて、実際に社会問題=労働問題として意識されるようになったのは、彼ら就職氷河期に出現したフリーターが不安定な身分のまま年長となり、その後の景気回復によって新卒就職できるようになった後から来た新卒との格差が無視できなくなってきた2000年代。
 一方、労働法制は、戦後米国ベースで制定された流れもあり、基本ジョブ型類型を踏襲。法体制と労働実態の乖離があるなか、実効的な労働施策も施さねばならず、その処方箋として、著者が提唱するのは、正規雇用であるメンバーシップ型雇用と、拡大する非正規雇用の間に、ジョブ型正社員を置くこと。

 うーん、まとめきれないが、日本の労働市場が特異だということは良く分かった。その中にどっぷり浸かっているのは一方で安穏だが、無制限の(会社への)奉仕を要求される過酷さも、また実感として良く分かる。
 個人的事情としては、長年、ワークシェアリングが制度化されて、業務量の分散と人間的生活の回復を図ることを願って来たにもかかわらず、不況と聞こえの良い労働力流動化政策によって低賃金の非正規雇用が急速に広まり、短時間労働者である非正規職員との賃金格差が拡大する一方、正規職員の労働強化という波に巻き込まれて過労死寸前。この日本、いやこの会社、どうしたものだか。多分筆者の提案が実現すりゃあいいんだけど。

2018年10月27日土曜日

0146 EQMM90年代ベスト・ミステリー 夜汽車はバビロンへ

書 名 「EQMM90年代ベスト・ミステリー 夜汽車はバビロンへ」 
出 版 扶桑社 (2000/9/1) 
初 読 2018/10/27 

 レズニック&グラビアンスキ!いい!も〜、色男+いい男+ネコ‘sって最高の組み合わせじゃまいか。短編でも長編読んだくらいのインパクトある。紹介してくれた読み友さんありがとう!

 文庫タイトルになってるブラッドベリの「夜汽車はバビロンへ」は主人公がジタバタしてるけどどうもパッとしない。あとヴァクスの短編は主人公が悪すぎで胸くそ悪いぞ。ラストの「ルミナリア〜」は、ばーさんの平穏な生活がどうなってしまうのか気が気ではなかったが、いやはや。年寄り怖い。

 〈各短編にコメント〉
1 ホールインツー 短編読んでるのを忘れてドキドキしてたら一瞬で終わった。 

2 引きまわし 悪辣なやり口が胸糞だ!

3 銀幕のスター 夢想の世界でフワフワしてるので気が気ではなかったが。そうだよね、女ってこういう風に強くなれる生き物。 

4 名もなき墓 まがう事なきハードボイルド!ヴェイル格好いいぜ。 長編が気になる。 

5 衣装 ・・・すごい面白かった。だけどこれもミステリなのかな?

6石の家の悲劇 この時代だからこその作品。

7追憶 〈追憶〉と名付けられた宝石と人間模様。追憶は美しいか切ないと相場が決まってるが、必ずしも真実ではない。自分に都合のよい過去の思いでにとらわれるよりは前を向け、と若者を諭すジャーナリストの女教授が気持ち良い。

8この葬儀取りやめ サイコーに面白い。レースに出場する犬が中毒しないことを祈る。 

9キリストの涙 由緒正しい冒険譚。多分著者の小説のスピンアウトだと思うが、邦訳はされてないっぽい。残念。

・・・・・・2年前に読んだアンソロジーだが、コメントを読んでもさっぱり内容が思い出せない。私の記憶って。。。。

2018年10月24日水曜日

0145 殺しのグレイテスト・ヒッツ

書 名 「殺しのグレイテスト・ヒッツ」 
著 者 ロバート・J. ランディージ (編集) 
翻訳者 田口 俊樹 
出 版 早川書房 (2007/1/1) 
初 読 2018/10/24 


 1 いきなりケラーの”殺し間違い”「ケラーのカルマ」で始まる本書。いや増すワクワク。しかしケラーさん、再読にもかかわらず、相変わらずじわじわくるなあ。

2 「隠れた条件」 
殺し屋?なのか?

 3 「クォリーの運」
殺しちゃえば良かったのに。。。

4「怒りの帰郷」はまずまず・・・・・だが、ここまで読んで殺しが足りん!と思うワタシは血に飢えているのか? 

5「ミスディレクション」
タイトルとお膳立てに裏読みしすぎてワクワクが不発に終わる。そこか〜。

6「スノウ・スノウ・スノウ」
これは長編でじっくり読みたい。

7「俺の魂に」
終わり方は何パターンかあったと思うが、、、、、惚れた♥️ 

8「カルマはドグマを撃つ」
殺し屋より一枚も二枚も上手。つまり殺し屋が三枚目なのはいただけない。やっぱり主役がカッコよくないとさ。 

9「最高に秀逸な計略」
うぬぼれが強い奴だな〜と思ったのだか。。。。

10「ドクター・サリヴァンの図書室」
この後どうなるのかが気になる。 

11「回顧展」
脳内で彼がパイクまたはジェントリーで再生可能。個人的にはパイク。

12「仕事に叶った道具」
面白かった。目的に叶った道具、つまりは道具選びが使い手の腕なわけだ。

13「売り出し中」
なぜ学校がモーテルの宣伝文句になるんだろう、と首をかしげる。が。それはさておきこれが殺し屋の宿命というものか。 

14「契約完了」
こういう話は好きだ。最後の一文はかえって蛇足かも。 

15 トリはディーヴァー「章と節」
なるほどね〜。だけどいつものディーヴァーに慣らされてる読者は要求水準も高いから・・・・なにはともあれ、ごちそう様でした。

2018年9月30日日曜日

0144 IQ

書 名 「IQ 」 
著 者 ジョー・イデ 
翻訳者 熊谷 千寿 
出 版 早川書房 (2018/6/19) 
初 読 2018/09/30 
 
「アイゼイアは怒りも感じていたが、何より感じたのは圧倒的な悲しみだった。」「赦されたわけではないかもしれないが、勘弁くらいはしてほしいね、とアイゼイアは思った。」

 底辺の、黒人、ギャングスタ、ドラッグ、クラックにまみれてメンツと金の為に他人を巻き込んで殺し合い、スラングとセックスまみれで汚泥のような。。。。。

 人生に抗えずに巻き込まれていくのに、なにこのさわやかさ。一冊丸々アイゼイアの若き苦悩の書だけど、面白いのはこれから!て感じが満々。これから兄を殺した犯人捜しが始まりそうだし、ドッドソンも可愛げがあるし。意外にも、料理で読める。ドッドソンのケイジャン料理が美味そう。『料理の鉄人』ってあっちでも放映してたのね(笑)
それにしても、今ブログにレビューを登録していて、これを読んだのが2年も前だということに、愕然としている。私、2年間なにをしていたのかな〜?

2018年9月15日土曜日

0142−43 完全記憶探偵エイモス・デッカー ラスト・マイル 上・下

書 名 「完全記憶探偵エイモス・デッカー ラスト・マイル 上」
     「完全記憶探偵エイモス・デッカー ラスト・マイル 下」 
著 者 デイヴィッド・バルダッチ 
翻訳者 関 麻衣子
出 版 竹書房 2018年6月 
 
 家族の殺害事件の真相を解明し事件に一応の区切りをつけたデッカーは、ボガートの要請に応えてFBIの民間人チームに加わる事にする。超絶な才能があるとはいえ、社会不適応気味なデッカーをカバーしてチームをまとめるボガートがこれまた好い人で。人が能力を発揮するためには、適材適所と緩衝材が必要なんだよなあ、と本筋とは関係ないところで感にいる。
 事件の方は、デッカーの勘と強引な突っ込みでどんどん時間を遡り、真相に近づいてそうには見えるものの、まだまだ裏がありそう。
 予想を裏切るどんでん返しあり、してやったりなミスリードあり、ラストは爽やかに気持ちよく。この話には母の愛が通底してる。そして父強し。
 アメフト野郎共の巨体もかすむ存在感である。ちょっと突っ込みが足りない、というか悪い奴らが少し物足りないというか、組み合わせた一つ一つのエピソードが熟成してないっていうかなんだけど、十分面白い!域に達してる。それぞれのキャラが立っていて、お父ちゃんなんて主役張れるレベルでした。まだまだシリーズ続きそうだから、熟成は今後の課題って事で、次の翻訳も楽しみです。

2018年9月10日月曜日

0140−41 完全記憶探偵 上・下

書 名 「完全記憶探偵 上」「完全記憶探偵 下」 
著 者 デイヴィッド・バルダッチ
翻訳者 関 麻衣子 
出 版 竹書房 2016年12月 
初 読 2018/09/10 



 プロフットボールプレイヤーのエイモス・デッカー。危険タックルで負傷して、完全記憶と共感覚を持つようになる。
 幸せな家庭を築いていたのに、ある日、突然、それを奪われる。惨殺された家族の記憶が薄れることはない。そんな中、発生した事件が町を震撼させる。そして、浮かび上がってくるエイモスの家族の殺害との関連。

 エイモスが犯人と疑われるんじゃないかとヒヤヒヤしながら読む。 ライトな読み口だけど、内容は中々にハード。完全記憶を持つデッカーがあらゆる情報を記憶してから反芻して、真実を導き出す過程が面白い。最愛の妻と娘を殺されて、人生のすべてを失った男でもユーモアのカケラが残ってるのが救い、というか、むしろそれが彼を救ったのか?ともかくも面白かった。ベリンダが哀れだし、そんなに簡単に操作されちゃうものか、とも思うし、真の黒幕の方の描写が足りないような気もするけど、まあいいか、と。新たな仲間を得たエイモスの今後の活躍を期待する。

2018年8月29日水曜日

0138−39 暗殺者の潜入 上・下

書 名 「暗殺者の潜入 上」「暗殺者の潜入 下」 
原 題 「Agent in Place (Gray Man) 」2018年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見威蕃 
出 版 早川書房 2018年8月 
初 読 2018/08/29


 いきなり、ISISに捕まって処刑される直前、て描写から始まって、前代未聞の危機一髪状態のジェントリー。どうするんだおい。
 今回はCIAの汚れ仕事ではなくフリーランス。CIAの汚仕事の後なので自分の気持ちに適った仕事をして、ちっとは浮上したかったらしいコート。だからって泥沼シリアには行きたくはない。だけど無辜の女子供の命がかかってると言われては、例によって善人スイッチON!

 上巻は敵味方含めて状況説明が多くちょっとダルいが、シリア入りしてからの戦闘描写は流石。ジェントリーの技倆は戦場では隠れようもない。
【お気に入りのセリフ】
「友よ。きみは重大な人間不信に陥ってるよ」
「ああ、どうしてだろうと思っている」
 そりゃあもう。何故だろうね! 

 さて、下巻に入ってからは、 グレイマン無双。コート、やっぱり傭兵部隊が似合ってるね。この寂しがり屋さんは本当はチームが好きなんだよな、とほくそ笑む。
 そして、ここ一番の所では伝家の宝刀「ラングレー直通電話」&米軍全面支援。
 無双過ぎて何だかな〜と思わないでもないが、グレイマンが全力で事にあたれる環境整備って点では申し分ない。

 今回は、フランス人元諜報部員のヴァンさんも何だかな〜の一員。
 全部が全部、コートのお眼鏡に叶うわけもないが、1話で3も回コートを裏切るのは、余りにも危険行為です。命知らずにもほどがある。
 まあ、最後は頑張ったけどね。二度とコートとは仕事できないだろうね。

2018年8月21日火曜日

0137 赤毛のストレーガ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

書 名 「赤毛のストレーガ」 
原 題 「Strega」 1987年 
著 者 アンドリュー・ヴァクス 
翻訳者 佐々田 雅子 
出 版 早川書房 1995年1月 
初 読 2018/08/21 

  今回は性被害に遭った少年を助ける為にバークが奔走する。だけど、隠れた(いや、隠れてないかも)テーマは、幼少時の性虐待がどれだけその子ども(いずれは大人になる)の人格形成に酷い影響を残すか、という例をストレーガの姿を通して示すこと、かもしれない。
 異性関係を支配/被支配でしか捉えられず、自分の肉体を投げ出す事で相手を支配しようとする行動パターン。
 自分の価値をセックスにしか見いだせない。
 他人と信頼や愛情を交わすことができない。
 人間としての成熟を阻害され、幼児性が顕在化している一方で、虐げられたこと、助けてもらえなかった事への怒りがいつも自分の中に渦巻いている。

 ストレーガの存在がとても重い。でもふとした瞬間に癒される事もあるのが人間の不思議でもある。男の子を守って癒した事、信頼に値する人間に出会った事がストレーガの癒しになるといいと願う。そして一服の清涼剤のようなミシェルの存在が素晴らしい。あんな女になれたら良いのに。

2018年8月12日日曜日

0136 フラッド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

書 名 「フラッド」 
原 題 「Flood」 1985年 
著 者 アンドリュー・ヴァクス 
翻訳者 佐々田 雅子 
出 版 早川書房 1994年9月 
初 読 2018/08/12 

 シリーズ1冊目は、主人公バークや彼の仲間の微に入り細を穿つ描写が結構なボリューム。
 ニューヨーク最底辺の特異な連中が、自分の生きる隙間を守る為に蠢いている様が、時にリアルに時にはファンタジーのように語られる。
 書き込みが過ぎてかえってリアリティーが薄れているきらいもあるが、これだけ徹底してディティールを書き込まなくては「フィクション」にできなかったのだろう、と思う。

 ヴァクスは児童虐待専門の法律家で、その実態を世間に知らしめるためにフィクションの体裁で書いた。現実はもっと凄惨だろう。

 それはさておき、フィクションであるからには、バークとその仲間達がとても魅力的である。
 バークは強いのだか弱いのだかよく分からないが、自分なりのルールと矜持に従って、サヴァイバー特有の、危険を察知する独特の感性を頼りにニューヨークの底辺を泳いでいる。聾唖の武道の達人、短軀の黒人の自称「予言者」、知的な美人の男娼、そして『性交園』というとんでもない名前の中華料理屋を営む「ママ」。
 最後の作戦が愉快。あれをラストの仕上げに持ってくることで、「殺し」はバークの本来の仕事じゃないって示してるのかな、とちょっと思った。

2018年8月6日月曜日

0135 スターダスト (ローダンNEO 1)

書 名 「スターダスト (ローダンNEO 1)」 
著 者 フランク・ボルシュ 
翻訳者 柴田さとみ 
出 版 早川書房 2017年7月 
初 読 2018/08/06 
 
 言わずとしれた、ローダンシリーズのリブート。 ローダンNEO。本家ローダンも、グインサーガも早々にリタイアしてしまった私には、天啓か?今からなら頑張れるかもしれない。しかし、にしても、この本が刊行された時点で、すでに原作は150話を超えているとか。本家は3,000話に近くなっているとか。NEO、いっそのことダイジェストで良いんじゃないか?死ぬまでに終わるんだろうか? とはいえまずは面白いと思えるかどうか、だ。かなり懐疑的だったのだけど、クレストとのファーストコンタクトで、ローダンが知的生命体の持つであろう叡智について語ったところで、がっつり掴まれた。そして、地球への生還シーン、最後に目にした追尾ミサイルのマークは母国アメリカ国旗。エピローグで腕からアメリカ合衆国の旗をむしり取って捨てるローダン。国家主義・民族主義が染みついたおバカさんじゃないところが素敵じゃないか。異星人の乗組員がみんなゲームにハマって正体失ってる、とか、クレストの病気の治療が人間なら可能、とか、ちょっと荒唐無稽に過ぎる感じはするけど、ごりごりのハードSFじゃないわけだし、そこんところは大甘にみて。


2018年8月5日日曜日

0134 女王陛下の航宙艦

書 名 「女王陛下の航宙艦」 
原 題 「ARK ROIYAL」 2014年
著 者 クリストファー・ナトール 
翻訳者 月岡 小穂 
出 版 早川書房 2017年6月 
初 読 2018/08/05 
 
 取り敢えずこれだけは言うぞ。邦訳タイトルが良くない!原題は『Ark Royal』、HMS Ark Royal》はイギリス海軍伝統の空母の名称だ。であるから、この船も宇宙空母もしくは航宙母艦だが、そもそも原題タイトルはあえてHMSが付いていない、としか思えないのに、そこを敢えて「女王陛下の」、とやるとはどんな覚悟なのかと小一時間。イギリス海軍の(この場合には宇宙軍の)艦船にはすべてHMSが付くとおぼしいのに、全部に「女王陛下の」と枕詞を付ける気か?・・・・・、と店頭平積みを見た瞬間、またかよ、といささかウンザリしたにもかかわらず、つい買ってしまったのだったが・・・・・まあ、いいや。毒を吐くのはこれくらいにしておかないと。

ではさて、ストーリーですが。
酒が飲みたい。とにかく酒が飲みたい。ほぼアル中の飲んだくれの老艦長率いる老朽航宙母艦が人類の最後の望みの綱となる。人類は、突然の宇宙人の攻撃に立ち向かえるのか?という人類存亡の危機がイギリス風味のやや安穏とした口調で語られる
 現在の国際情勢をほぼそのままで、人類は外宇宙に進出している。だから宇宙軍も「地球軍」ではなくあくまでイギリス軍、ロシア軍、中国軍、、、、となって協調性がない。
 そんな中メキシココロニーやロシアコロニーが宇宙人の攻撃を受けて各軍協力を余儀なくされる。とはいえ、その当たりの描写はとことん乏しい。
 艦長の座を狙う気満々だったやり手若手のフィッツウィリアム副長は、当初の思惑こそ浅はかだったが、老艦長に仕えると覚悟を決めてからは有能で忠実な部下としての本領を発揮、艦長を支えて艦務に邁進。この辺りは、伝統だよなあ、と思う。部下の有能さと艦内の人間関係は気持ち良い。
 しかし、戦闘描写は冗長で行き当たりばったりの感がある。これはひょっとして、物語中に登場するおバカな従軍記者達並みに、自分が状況把握が出来ていないせいなのか?と疑惑が頭をもたげる。
 行く先々で予想された異星人からの反撃がなくその幸運に助けられるが、いくら人間常識の範囲外の敵が相手とはいえ、幸運すぎないか?続刊を読むかどうかはちょっと悩ましいところ。とはいえ、ファーストコンタクトものとして、言語も文化も思考様式も異質でまったく意思疎通もできない異星人と、戦争するにしても講和の道を模索するにしても、ありきたりな宇宙戦争でない話を読ませてほしいもの。
 このシリーズを9冊出すのなら、「栄光の旗のもとに」ユニオン宇宙軍戦記も続刊の出版をお願いしたい。それはもう。是非。
【一応の覚え書き】
 なぜか同時期一斉に、宇宙戦記もの、3部作の1巻目がハヤカワから刊行。
『栄光の旗のもとに』『暗黒の艦隊』『女王陛下の航宙艦』
 この、アークロイヤルは、艦長のキャラが、『暗黒の艦隊』ジャクソン艦長とかぶる。副長フィッツウィリアムと『栄光の〜』の艦長マックス・ロビショーがもろキャラ被り。艦隊行動については、彷徨える艦隊と被る。まあ、それぞれの本を読んだ順番に影響されているのだが、総じて、『女王陛下の航宙艦』が「何かに似ている」という印象を抱く。それでも、個人的には面白ければ良いので、よろしく頼みたい。(何をだ?)


2018年7月31日火曜日

0133 長いお別れ

書 名 「長いお別れ」 
原 題 「The Long Goodbye,」1953年 
著 者 レイモンド・チャンドラー 
翻訳者 清水 俊二 
出 版 早川書房 1976年4月 
初 読 2018/07/31 

 心優しくも不器用な男達の友情。というよりはむしろ愛に近いような気すらする。
 最初の数章と最後の一章で凄く良い本を読んだような気になったが、中盤は冗長だし、アメリカ白人上流階級の排他的・退廃的・モラル崩壊してる様子が、弱冠不愉快ですらある。女3人のそれぞれの描写も、私の理解からは離れていてイライラ。
 マーロウもイライラしているが、そうか、友の死を巡る状況に実は怒っているのか。

 そんな上流連中に振り回されつつも閃きと執念で体を張り、友とその妻の死の真相に迫ろうとした結末は、無情だった。行き所のない静かな怒りと喪失感が読後もずっと胸に残る気がする。

2018年7月28日土曜日

0132 銀河英雄伝説  3 雌伏編

書 名 「銀河英雄伝説  3 雌伏編」 
著 者 田中芳樹 
出 版 創元SF文庫 《初版は徳間ノベルズ 1984年4月》 
初 読 1984年頃?   再 読 2018/07/28

 再読企画《銀英伝》  往年のファンとしては読み方がマニアックになるのは否めない。
 3巻で特筆すべきはこれ!「オーベルシュタインの犬」。 
 人名録に「オーベルシュタインの犬」「オーベルシュタインの犬の飼い主」とそれぞれ記載されても可笑しくないほどのインパクト。 
 あと一つはやはり「黄色いばらの花束」。 
 以来初読より30余年。定期的に衝動的に黄色いバラの花束を求めたくなる。例え花言葉が「嫉妬」であっても。 
 シュトライトとリュッケの副官コンビ結成もこの巻。シュトライトは好きだ。色々はしょってるがラストのミュラーの勇姿が光る。
「何だ、この犬は?」
「は、あの、閣下の愛犬ではございませんので?」
「ふむ、私の犬に見えるか」
「そうか、私の犬に見えるのか」。
 オーベといい、フェルナーといい、目的のためなら手段を選ばない現実主義者が私は好きだなあ。でも、こんな面もあるのよ。
 そしてキャゼルヌ先輩は、トリューニヒトの隠しようのない悪臭に隠れる致命的な毒に気付き始める。そうそう、査問会という不毛なイベントもあった。とにかく、嫉妬羨望で人が人の足を引っ張るのはかくも醜いものなのだ。
 そうだ、もう一つ思い出した。要塞をワープさせるんならいっそのことイゼルローンを飛び越えて同盟側出口に布陣出来なかったものか、と思うんですがね?一応イゼルローン回廊を飛び越える技術はまだないって設定なんですよね。だけど要塞を飛び越えるくらいは出来そうじゃないですか。 と、30年越しの疑問を口にしてみる。

2018年7月26日木曜日

0131 湖中の女

書 名 「湖中の女」 
原 題 「The Lady in the Lake」1943年
著 者 レイモンド・チャンドラー 
翻訳者 清水 俊二 
出 版 早川書房 1986年5月 
初 読 2018/07/26 

 これはすんなり読めて面白かった。
 最後の2行目までは本格ミステリー。最後の1行でハードボイルドになった感じです。どんでん返しも王道で好みでした。
 毎度ハラハラさせられるマーロウ、今回も後頭部を強打されて昏倒。毎回、後遺症もなく生きているのが不思議だ。パットンがいい味出してる。
 タイトルからもう、湖に女が沈んでいるのはお察しだし、あとは発見のタイミングと誰が沈んでいるのかの問題。
 そして身長・スタイル・髪の色や髪型が良く似ている女が二人、とくれば、どなたかも書かれていたけど、これはもう、入れ違いになっているに違いない。そこまで分かっていても、やっぱり謎解きが面白い、本格ミステリーな仕立てだった。でも、最後の1行できっちりハードボイルドに持ってくるところがさすがの巨匠。

2018年7月24日火曜日

0130 かわいい女

書 名 「かわいい女」 
原 題 「The Little Sister」 1949年 
著 者 レイモンド・チャンドラー 
翻訳者 清水 俊二 
出 版 創元推理文庫 1959年6月 
初 読 2018/07/24 

  読むのが長引いたせいか、自分が疲れていたせいか、ストーリーに没入出来ずやや辛い読書になってしまった。3人の女が代わる代わるマーロウに絡んでくるが、次々と出てくる登場人物との相関が複雑で、なかなか読み解けない。いちばん悪い(かわいい)女は誰?猫の目のように表情をかえる女達に、マーロウ共々翻弄された。もうちょっと余裕のあるときに再読したい本。それにしても毎度、なぜマーロウが殺されないのか不思議。タイトルの「かわいい女」は誰にとって?ラガーディ医師にとって、だったのか。もっとも、原タイトルはLittle Sisterだった。 「愛しき女」がムース・マロイにとってだったように。そういえば最初は「兄を探して」という兄思いの可愛い妹から始まったのだった。もっとも「手に負えない女」はみんな、マーロウにかかったら「かわいい女」に変換されるのかも??

2018年7月13日金曜日

0129 大いなる眠り

書 名 「大いなる眠り」 
原 題 「The Big Sleep,」1939年 
著 者 レイモンド・チャンドラー 
翻訳者 双葉 十三郎 
出 版 創元推理文庫 1959年8月 
初 読 2018/07/13 

このチャンドラーのシリーズは、東京創元社の「創元 夏のホンまつり @東神楽坂」でまとめて入手。良い買い物だった。そして良いイベントだった。

 チャンドラーの長編第一作。1939年の作である。
 一作目にしてこれ!富豪の老将軍の依頼は娘の一人に関わる恐喝事件。しかし、本当に老人の心を捉えていたのは、もう一人の娘の婿の消息だった。
 マーロウが恐喝事件を探ると、意図しない殺人が起こっていき。。。
 依頼されたわけではない娘婿を探すとも無く探すうちに、見えてくる一人ひとりの情と思惑。これだけワルが沢山いて、しかも嫌なやつがいない。真相は小さく空しく、解決策はない。ただ「大いなる眠り」を強く、優しい探偵が見つめる。
 雨とスモッグを重く含んだ冷たく汚い濃霧に包まれるような、濃厚な読後感だった。古めの台詞が面白い。「モチだぜ」昔はナウくていなせな言葉だったんだね。拳銃を「パチンコ」と言っていた時代があったのか。「パチンコ」「はじき」「チャカ」の俗語の中ではいちばん古いとな。事件を解決する話、ではなく、世の無常とマーロウのかっこよさを堪能する話です。今時、こういう格好良さの男の話はなかなか書けないんじゃないかなあ、とも思う。

2018年7月7日土曜日

0128 さらば愛しき女よ

書 名 「さらば愛しき女よ」 
原 題 「Farewell, My Lovely」1940年 
著 者 レイモンド・チャンドラー 
訳者 清水 俊二 
出 版 早川書房 1976年4月 
初 読 2018/07/07 

 ラストのマーロウとランドールの会話がもの悲しく胸に残る。これがハードボイルドか、と得心。男達は皆魅力的なのに、女はみんな猫が人間に化けてるみたいな造形だ(笑)。チャンドラーにとっても女は猫と同じくらい不可思議な生き物だったんだろう、と思うことにする。なので、アンの描写がイマイチなのは、仕方ない。翻訳のせいもあるかもしれな。古き良き時代の男の世界。1940年の作。本書は1976年ハヤカワ刊の清水俊二訳。言いたかないけど、この本が書かれたとき、日本は戦争真っ盛り、パールハーバーも目前。この時、日本はどんな世相だったのだったけ?と、およそこの本には関係ないことを思う。
 

2018年7月3日火曜日

0127 プレイバック

書 名 「プレイバック」 
原 題 「Playback」1958年 
著 者 レイモンド・チャンドラー 
翻訳者 清水 俊二 
出 版 早川書房 1977年8月 
初 読 2018/07/03 

 レイモンド・チャンドラー。
言わずとしれたハードボイルドの大家の作を初めて読む。
なのに、ついうっかり、最晩年の最後の長編から読んでしまった。 そのせいかどうかは判らないが、あまり謎解きには重きを置いていないようだ。テーマはフィリップ・マーロウの生き様。 トレンチコートの襟を立て、斜めに帽子を被ってそうな、まさにこれぞハードボイルド。
 「タフでなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない。」 冒頭の台詞をが全てを語っている。 

 事件は起こったような起きなかったような。
最初から最後までどことなくモヤモヤしているが、マーロウの生き様、という一点では書き切ってる。なぜ、そこまで女を守ろうとする?そこにやはり時代を感じる。  今時は、生きてる女は簡単には守らせてくれない。だからきっと死体にされてしまうのだろう、と最近のハードボイルドを思う。
 村上春樹氏の新訳版とも、読み比べしてみたい。


2018年6月30日土曜日

イアン・ランキン 作品一覧



発表

作品名

邦題

シリーズ

注記

1986

The Flood

1987

Knots and Crosses

紐と十字架

リーバス警部1

文庫

1988

Watchman

1991

Hide and Seek

影と陰

リーバス警部第2

文庫

1992

Tooth and Nail

リーバス警部第3

Strip Jack

リーバス警部第4

A Good Hanging and Other Stories

短編集

1993

Witch Hunt

ジャック・ハーヴェイ名義

The Black Book

リーバス警部第5

1994

Bleeding Hearts

ジャック・ハーヴェイ名義

Mortal Causes

リーバス警部第6

1995

Blood Hunt

ジャック・ハーヴェイ名義

1996

Let it Bleed

血の流れるままに

リーバス警部第7

文庫

1997

Black and Blue

黒と青

リーバス警部第8

文庫

1998

The Hanging Garden

首吊りの庭

リーバス警部第9

ポケミス

1999

Dead Souls

死せる魂

リーバス警部第10

ポケミス

2000

Set in Darkness

蹲る骨

リーバス警部第11

ポケミス

2001

The Falls

リーバス警部第12

ポケミス

2002

Resurrection Men

蘇る男

リーバス警部第13

ポケミス

Beggars Banquet

貧者の晩餐会

短編集

2003

A Question of Blood

血に問えば

リーバス警部第14

単行本

2004

Fleshmarket Close

獣と肉

リーバス警部第15

単行本

2005

Rebus's Scotland: A Personal Journey

2006

The Naming of the Dead

死者の名を読み上げよ

リーバス警部第16

ポケミス

2007

Exit Music

最後の音楽

リーバス警部第17

ポケミス

2008

Doors Open

2009

A Cool Head

The Complaints

監視対象

マルコム・フォックス第1

文庫

Dark Entries

2011

The Impossible Dead

偽りの果実

マルコム・フォックス第2

文庫

2012

Standing in Another Man's Grave

他人の墓の中に立ち

リーバス警部第18
マルコム・フォックス第3

ポケミス

2013

Saints of the Shadow Bible

寝た犬を起こすな

リーバス警部第19
マルコム・フォックス第4

ポケミス

2015

Even Dogs in the Wild

リーバス警部第20
マルコム・フォックス第5

2016

Rather Be the Devil

リーバス警部第21
マルコム・フォックス第6