2021年12月31日金曜日

2021年12月の読書メーター

 2021年12月の読書は、実質3冊。とはいえ、『ヒューマン・ファクター』と『クリスタル』を読めたのは大きい。そうこうしていたら、アンドリュー・ヴァクス氏の訃報が。往く年来る年、去る人もいれば、新しく生を受ける人もいるだろう。この世にある全ての命に必要なだけの愛を。困難には力を。 周囲には優しさを。

12月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1839
ナイス数:1070

クリスタル (ハヤカワ・ミステリ文庫)クリスタル (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
【追悼 アンドリュー・ヴァクス読書会】今作、バークは長年住んだ隠れ家と“表の顔”の身元を失い、生計手段もすべて失い、おまけにパンジイを危うく失いかける危機に晒された。その上に恋人のクリスタル・ベスを喪失する。バークの精神のたがが緩み始めたようで頻繁に解離を起こしている。ファミリイも案じている。バークはクリスタル・ベスの復讐を胸に誓うが、情報がない。クリスタル・ベスが殺された事件をきっかけにゲイ迫害者と小児性愛者を殺害する事件が頻発し、バークも容疑者の一人に。バークは独自に犯人を追い、WEB上で接触するが。
読了日:12月30日 著者:アンドリュー ヴァクス


ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)感想
“スパイ小説”というよりは二重スパイを主人公とした文学作品の趣き。機密情報漏洩の内部査察と若い同僚の突然の死を契機に、沈黙のうちに務めを果たしていたMI6の古参スパイが心理的に破綻していく。3人の上官の描写も見事で、医師の酷薄さがリアルで小説とは思えない。無残なラストが深く心に残る。人は卑小な存在なのに他人の人生や国や歴史、大きな物事を動かしたがりすぎる。妻と息子の小さな「祖国」を守ることは許されないことなのか。どこにも“こうすればよかった”というターニングポイントなどない。カッスルの寂しさが胸に痛い。
読了日:12月18日 著者:グレアム グリーン

エリカ 奇跡のいのちエリカ 奇跡のいのち感想
『神様の貨物』と通じるお話と聞いて。600万人。当時のヨーロッパのユダヤ人の半数以上。これは一人の狂人のやったことではないことをしっかりと記憶したい。私も、あなたも、殺される側にも、殺す側にも立ち得るからこそ。
読了日:12月15日 著者:ルース・バンダー ジー

虚妄の女王~辺境警備外伝~ 2 (ボニータ・コミックス)虚妄の女王~辺境警備外伝~ 2 (ボニータ・コミックス)感想
コレは? 辺境警備番外編の『星の生まれた谷』の続き? あの隊長さんのシリアスヴァージョン『軍団長』、かっこいいです。あとは神官さんの登場を待つのみ。
読了日:12月15日 著者:紫堂恭子
虚妄の女王~辺境警備外伝~ 1 (ボニータ・コミックス)虚妄の女王~辺境警備外伝~ 1 (ボニータ・コミックス)
読了日:12月15日 著者:紫堂恭子

米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方感想
 自分が仕事ができていると感じている時の充足感や、業務にひいては社会にコミットしている、と思える時の健全な満足感は、人が仕事をして、それによって長い人生を生きていく上でとても大切で必要なもの。またそれによって組織は有機的に動き出し、想像以上のスピードと成果を上げることができる。「優秀ではない」とされた米原潜で、艦の能力を高めるために、命令による支配ではなく、権限の委譲と各自の責任に基づく判断を尊重し、技能と理解の向上に取り組んだマルケ艦長(当時大佐)の実践を簡潔にまとめたもの。非常に面白いとともに有用。
読了日:12月04日 著者:L・デビッド・マルケ

 付箋を貼って、コメントいれつつ再読。ついでにお仕事スイッチがON。予定していた年末とは違った展開になっているかも。上司を戴く立場としても部下を持つ立場としても、学ぶことの多い良書ですよ。
読了日:12月11日 著者:L・デビッド・マルケ


読書メーター

2021年(令和3年) 年末雑感


 11
月に『ハンターキラー』シリーズを読んで突然始まった潜水艦マイブームに乗っかって、長らく沈降気味だったメンタルが潜望鏡深度あたりまでどうにか浮上。横須賀に艦を見に行ったり、映画館に行ったり、活動性も向上した。ブログの方もそっち方面がやや充実。
 実は、浮上の本当のきっかけはこの本『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』を読んだこと。
 我ながらどうやって脳内のスイッチを切り替えたのだかよくわからないが、とにかく不安傾向に強く支配されていた心理状態をオフにして、無駄なエネルギー漏れの改善に成功した(ような気がする)。なんとかこのまま調子を上げて年度末に持ち込み、良い状態で新年度に臨みたいもの。

昨年の年頭つぶとその結果

今年の抱負(2021年年始のつぶやきより)
 ✓ 積んでいるディーヴァーを読む。6作12冊 → 1作2冊のみ読了。
 ✓ 積んでいる特捜部Qを読んで『アサドの祈り』文庫本化に備える。4作8冊 → 未読
 ✓ キンケイド警視シリーズの残り8冊 → 未読
 ✓ ダグラス・リーマン 紅の海兵隊シリーズ4冊と原潜1冊、『キール港の白い大砲』がトリ → 未読
 ✓ ボッシュシリーズを攻略 → 未読
 ✓ そしてロバート・クレイス新刊『危険な男』 → これはさすがに読んだ。
 ✓ あとは、ドン・ウィンズロウ、リューイン、フロスト、ヴァランダー、その他諸々 すべて手つかず。
 ✓ 海洋もの(ボライソー、ホーンブロワ他)は巻数が多すぎて、とても読破はムリ → ハンターキラーシリーズ6冊を読了
 ✓ 新たな出会いももちろん望む →なんといっても2021年の一番大きな出会いは『ガブリエル・アロン』シリーズだった。そして、ガブリエルに触発されて、ユダヤ人問題にも感心が深まる。2022年は、勉強の年にもしたい。
 ✓ その他 私を待っている未読本の諸々 ヴァクスの『バークシリーズ』を読み進めたのが成果といえるかも。今年はヴァクスの年、と内心思っていたのだが、年末にヴァクスの訃報に触れる。1942年生まれの彼であるからにはいつかは訪れる別れだった。しかし、大きな星が墜ちたような喪失感を味わっている。彼がこれまでに築いた活動が今後も方向をあやまたず、強固に柔軟に進んでいくことを願う。

2021年12月26日日曜日

0312 クリスタル(ハヤカワ・ミステリ文庫)

書 名 「クリスタル」 
原 題  CHOICE OF EVIL (Burke Series Book 11)」 1999年 
著 者 アンドリュー・ヴァクス     
翻訳者 菊地 よしみ    
出 版 早川書房 2001年6月 
単行本 584ページ
初 読 2021年12月25日
ISBN-10 4150796106
ISBN-13 978-4150796105
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/103382173   
 バークは、前作で出会ったクリスタル・ベスと、恋仲になっていた。
 バークの隠れ家の家主である男の逆恨みで長年住み慣れた隠れ家を失ったバークは、パンジイと共にクリスタル・ベスのセーフ・ハウスに移り住んだが、そんなときに、ゲイの集会に出かけたベスが、同性愛者を嫌悪する殺人者の巻き添えになり銃殺されてしまう。再び住処を失い、三度恋人を喪ったバークは、新しい生活基盤を作りながら復讐を心に誓っていたが。。。。

*** *** *** *** *** *** ***

 今作は、バークの内面の傷つきを深く感じる。
 長年住んだ隠れ家を失い、“表の顔”として手間をかけて維持してきた身元を失い、生計手段(小口詐欺)をすべて失い、おまけにパンジイを危うく失いかかる危機に晒された。
 そこに、クリスタル・ベスの突然の消失が加わる。バークの精神のたがが緩み始めたようだ。頻繁に解離が起こるようになっていて、ママの店の指定席でそうなったとき、ファミリー達が地下室に担ぎ込んで介抱していた。バーク本人にその間の自覚がないからどんな様子だったのかは語られないのだが、ファミリーの反応からして結構酷かったのだろうと推測する。バークの自己コントロール不全は不安な要素だ。バークとセックスしたがる女・ネイディーンは、なぜかバークに本能的な不安と怯えを抱かせるようで、バークの拒絶感が会話に現れ、コミュニケーションがほとんど成立しない。
 バークは、ネイディーンの何かを恐れて、言葉を尽くして近寄るなと言っているのだが、ネイディーンにはまったく疎通しない。バークが背中の毛を逆立たせた野生の小動物のように見える。自分に構うなと理解させようとするバークの努力が涙ぐましい律儀さだ。

 一方で、ふたたび登場したストレーガの変容が艶容に輝かしい。
 かつての性的に搾取された女の子を内在させていた未成熟な女性は、加害者であった男への復讐を経てある種の成熟に至っているようだ。
 ストレーガことジーナの初出は『赤毛のストレーガ』で、この巻では、彼女は幼少時から性的虐待を受け続けた女性そのものの姿だった。自分の性を差し出すことでしか、男性との関係を築くことができず、怒りが内面に渦巻いていた。その後、何年かがたち、彼女の目の前でバークはジュリオを殺すこともした。ストレーガの深い傷は、彼女の生来の強さで埋められてたようだ。傷はなくなりはしないが、まるで金継ぎによって、傷そのものが美しさと輝きを纏うように、ストレーガは成熟した女性になっている。

 バークは、自分と共通するストレーガの内面を恐れつつ、ストレーガに憩ってもいる。魔女の底なしの奥の深さを垣間見る。

 ストーリーは、クリスタル・ベスが巻き込まれた銃乱射事件の犯人を追うバークを意外な方向に連れて行く。ゲイを嫌悪する人々とゲイを隠れ蓑にした幼児性愛者に対する殺戮から、死んだはずの殺し屋ウェズリイの名をかたる殺し屋の存在が明らかになり、バークが接触を試みると、男は自分語りを始める。
 バーク、ウェズリイ、ウェズリイに成り代わろうとした男、ネイディーン、ストレーガ、すべてが幼児性愛の犠牲者であり、その体験が人格形成に大きく関わっている。バークとウェズリイはお互いがお互いになりたかった、合わせ鏡のような人間だし、ネイディーンとストレーガもしかり。

 ネイディーンとの関係、ネイディーンの中の病理、ホモ・エレクトスの中の論理、なぜそれがバークに理解できるのか、いろいろと未消化なままの読書となってしまったので、いずれ再読しようと思う。

2021年12月25日土曜日

映画『ユダヤ人の私』 ドキュメンタリー



マルコ・ファインゴルド氏。1913年生まれ、2019年没。

 ハンガリーで生まれ、ウイーンで育つ。4人兄妹の3番目で、2人の兄は収容所で殺害され、妹は戦争終了まで身元を隠して生き延びたにもかかわらず、終戦直後に行方が判らなくなった。彼は一家のたった一人の生き残りである。
 このドキュメンタリー映像は、亡くなる直前の2018年から19年の収録されたものだそうで、106歳とは思えぬしっかりとした語り口で、淡々と「ユダヤ人」としての彼の生が語られる。

 家族で幸せだった子ども時代。奔放な10代から20代前半。仕事が無かったオーストリアを離れて兄とイタリアに行き、商売をして成功したが、パスポートの期限が切れるためにオーストリアに一時帰国したのが、1938年3月、アンシュルス(オーストリア併合)の数日前だった。そして、マルコ氏は、ウイーンに進駐するナチス・ドイツと、それを熱狂的に歓迎するウイーン市民を目の当たりにした。

 戦後、オーストリアはナチスの最初の占領被害国であると主張したが、オーストリア国民は紛れもなくナチス・ドイツを歓喜で迎えいれた。この日、わずかな時間で、ウイーンのユダヤ人の命運が暗転する。マルコ氏はパスポートの更新もできずに、兄とともにチェコスロバキア国境に逃れたが、無効となったパスポートを所持していたためにチェコスロバキア国内でつかまりポーランドに送られる。ポーランドで偽造の身分証明書を入手して市民に紛れ込んだが、今度は兵役忌避者と見做されて捕まってしまう。やがて、ついにゲシュタポに逮捕され、出来て間もないアウシュビッツに送られ、そこから今度は労働力としてダッハウ、ノイエンガンメ、ブーヘンヴァルト強制収容所に移送。途中で兄とも生き別れとなり、後に兄は収容所で殺されたことが判明する。

 106歳の語りは、とりとめもなく、間に挿入されるアーカイブ映像も、当時の世相を見せるものではあるが、氏の体験と直接結びつくものではなく、曖昧模糊とした印象が終始漂う。アーカイブ映像の見せ方には、ドキュメンタリー映画としてやや難があると感じた。

 しかし、その中でもはっきりと際立つのは、オーストリアへの怒りだ。

 ブーヘンヴァルトで終戦を迎えた被収容者は、国籍二十数カ国に及び、各国は迎えを寄越して解放後数週間で帰国していったが、オーストリア出身のユダヤ人は放置された。自分達で交渉し、輸送手段を確保してオーストリアに帰国しようとしたが、オーストリアはユダヤ人の受け入れを拒否した。

 淡々と、106歳の老人が過去の体験を語る、それだけのドキュメンタリーで、劇的なこと、衝撃的な映像、といったものではない。ところどころ前後関係の脈絡がなかったり、首をかしげる部分もないではない。しかし、アンシュルスの日を境に足元が崩れるように崩壊していったオーストリアのユダヤ人の様子が伝わるし、戦後にナチスドイツの被害者を装ったオーストリアは、実は雪崩をうってナチスに迎合したこと、そのことを告発しつづけたユダヤ人の証言として、大切な証言映像だと思う。また、反ユダヤ主義は、今も脈々と拡大再生産されており、こうやって抵抗し、告発していかなければ、いつまた、生存を脅かされるかもしれない、という危機感も伝わってくる。

 今も、反ユダヤ、ホロコーストの否定はヨーロッパ、全世界に広がっており、オーストリアのユダヤ人協会の会長を長年務め、積極的に講演活動も行っていた氏には、誹謗中傷の手紙やメールが数多く届いている。

 映像中に、それらの「生の文章」が差し込まれる。

 戦後は、ザルツブルグに住まい、パレスチナの地に移住しようとするユダヤ人を支援した。
家も財産も略奪されて帰る場所のない十万人ものユダヤ人が、ヨーロッパの外に移住してくれるのは、ナチのユダヤ人迫害に加担、もしくはこれを黙認した各国にとっても好都合だった。イスラエル国の成立にこのような側面があることも、現在のパレスチナ問題に大きく影響しているのだろう。もっともっと深く考えなければならないと思う。

2021年12月23日木曜日

映画『マトリックス4』を観てきた。

マトリックス レザレクションズを観てきた。
映画館なんて、10年ぶり以上・・・・(近所のミニシアターを除けば)ええと、記憶に間違いがなければ、『風立ちぬ』以来。
IMAXも初めて。
感想・・・・・というか、なんというか、これまでどーしても若いキアヌと今キアヌがイメージの中で同一人物に思えなくて難儀していたが、ついにつながった(笑)。
つまり、「ジョン・ウィック」は髭を剃ったら、中年ネオになった。むろん、あの一途な瞳はそのまま。切ないことこの上ない。

で、過去3作をかなり良く観ておかないと、話についていけないだろう。公開前の下馬評では、もう一つのマトリックス説とか、青カプセルを飲んだ方の並行世界ヴァージョン、とかの噂もあったが、完全に、前3作からの続きもの。
とりあえず、Amazonプライムビデオとかで、今タダで前3作を観ることができるので、全部みて、どっぷりと世界観に浸ってからレザレクションズを観ることを、お勧めしたい。でないと、置いてけぼり感が半端ないことになるだろう。

ストーリーというほどのものは、ない。(断言)
ネオが起きる。トリニティを助ける。トリニティ覚醒。以上。

でも、それでよい。そもそも、マトリックスってそんなもの。
その世界に酔いしれるべし。

2021年12月20日月曜日

海・駆逐艦・潜水艦 その3(Googleマップで確かめてみた)

横須賀の海軍基地をGoogleマップで眺めて見て、がっつり潜水艦が映り込んでいることが分かったので、『ハンターキラー』で登場した米海軍基地も眺めてみる。ひょっとして原潜が見つかるかも? てか、本当に写ってるよ。びっくり。民間の衛星写真ですらこれだもの。もはや世界中、露天では何一つ隠せないのが良く分かる。

←で、これが横須賀です。
がっつり。おやしお型とそうりゅう型が仲良く並んでる。それにしても、駐車場の目と鼻の先に無造作(?)に潜水艦が泊まってるとは。むろん基地関係者の車だろうけどさ。私にとっての非日常(=潜水艦)は、基地の人には日常なんだな、とか考えたり。
こんな写真を見てしまった日には、ロサンゼルス級とか、原潜はどれくらい大きいのかな、と、探したくなるではないか。

で、探してみた。(ちなみに縮尺は合わせていない。あしからず。)

サンディエゴ潜水艦基地。→
水中のプロペラが辛うじて見えている。これはロサンゼルス級?


←こちらはパールハーバー。
二艦が縦に並んでいる。



←こっちもパールハーバー。
バージニア級っぽい形の艦尾が水中に透けて見えてる。さすが、ハワイは水が綺麗なようだ。ミサイルの垂直発射管も蓋開けて丸出しじゃないか。いいのか?



乾ドッグ入りしているのも、丸見え。パールハーバーはざっと探して、埠頭に6隻、ドッグに2隻見つかった。





こちらはノーフォーク。→
海の水、きたなっ。泥水みたいな色だ。都会だし、湾内奥だし、仕方ないのか?

この艦は、セイルに潜舵が付いているタイプのようだ。

ちなみに、フランスはどうかな?
ブレスト軍港。→
モザイク掛かってますね。このあたりは国ごとに規制の度合いがちがうんでしょうかね。

 それにしても、リアルタイムの写真ではないと分かっていても、こんなに見えちゃうとドキドキします。中はカラだとしても弾道ミサイルの発射管くらい隠しておいてほしいと、素人・一般人の私は思ってしまうのでした。

2021年12月19日日曜日

海・駆逐艦・潜水艦 その2(横須賀軍港めぐりに行ってきた)


横須賀港に行ってきました。
お目当ては港内遊覧船の『横須賀軍港巡り』その名の通り、湾内の海の上から停泊中の艦艇を眺めることができる珍しいツアーです。

 最初に潜水艦を目撃。艦尾ちかくから真っ白い排気を上げている。この艦はエックス舵のそうりゅう型。
 この後、おやしお型が2隻、並んで停泊しているのも目視。米軍基地がある側の岸壁を使っていたので、あれ?と思ったが後でGoogleマップで確認したら、ここが自衛隊の第二潜水隊群司令部のようだ。にしても、軍事基地の航空写真がここまで見れてしまうのね。ともあれ最近は潜水艦関連の本ばかり読んでいたので、実物の潜水艦を見ることができてドキドキだ。



 湾内、浦賀水道に向かって右手は横須賀米海軍基地。空母ロナルド・レーガンが停泊しているのは下調べ済みだったが、空母の護衛のイージス艦も沢山いる。
 湾のすぐ先は船舶の往来が賑やかな浦賀水道だが、自然の地形に守られた港内は静か。
 こちらは海上自衛隊の艦船。
6102が試験艦の〈あすか〉
101は護衛艦〈むらさめ〉
そのほかにも掃海艇や潜水艦救難艦〈ちよだ〉、
補給艦、護衛艦、イージスも。なかなか綺麗に写真がとれたが、マストの先っぽが見切れてしまったのは、失敗。

手前の110の艦は、護衛艦〈たかなみ〉
111は護衛艦〈おおなみ〉です。


 潜水艦の写真にはセイルに大きく艦番号が描かれているのが多いけど、実働中は表示していないのか。艦番号がないとどれがどれだか、素人にはさっぱり分からない。辛うじて艦尾のエックス舵からそうりゅう型かな、というくらい。とはいえそのエックス舵が港内に4隻いた。あれ、横須賀配備のそうりゅう型って、ずいりゅう、こくりゅう、せいりゅう、とうりゅう、だから「そうりゅう型」は勢揃いしていたのかもしれない。

 午後3時からの最終便だったので、湾内を巡っているあいだに、日が低くなってきて、逆光に浮かぶ艦たちが美しい。

 次回は、私の愛する氷川丸に逢いに、横浜港に行かねば。

2021年12月18日土曜日

0311 ヒューマン・ファクター グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

書 名 「ヒューマン・ファクター」 
原 題 「THE HUMAN FACTOR」1978年
著 者 グレアム・グリーン
翻訳者 加賀山 卓朗
出 版 早川書房 2006年10月 
単行本 495ページ
初 読 2021年12月18日
ISBN-10 415120038X
ISBN-13 978-4151200380
 
「文学」と「小説」の間に明確な区分などないとは思うが、これは、文学よりのスパイ小説。・・・・というより二重スパイを主人公とした文学作品、の味わい。

 MI6の長官、その親友である医師(治療より毒物研究や謀殺担当?)、保安担当の大佐、主人公、そしてその同僚。登場人物は多くないが、描写は細やかで、それぞれのキャラクターが見事に立ち上がっている。とくにパーシヴァル医師の酷薄さは、現実にもまさに居そうで背筋が寒い。

 また、かつての植民地宗主国の筆頭であるイギリスの小暗い歴史を背景に、登場人物各人がアフリカに向ける思いはイギリスならでは。アパルトヘイト政策を現地で支持した白人は、すでに入植から300年以上もたつ「アフリカ人」だったのか。こういう本でも読まないと、日本人である自分には気づけない事柄もあった。

 二重スパイを疑われたMI6の若手の要員デイヴィスの死が周囲に及ぼす波紋。慎重に沈黙を守ってきた二重スパイがついに耐えきれなくなって、破綻していく様子がリアルである。
 ラストの無情さ、無残さは、現実の世界情勢の救いのない無残さを思わせる。
 彼は妻と再会できるのか。できたとして、年齢の離れた2人を死が分かつとき、妻は、かの国でどうやって生きていけるのだろうか? 彼らの息子の命運は? と最後のページをめくってこれが物語の終わりだと気付いた時に自分の中にのこされた不安と愕然に呆然とする。
 人間は、卑小な存在なのに大きな物事を動かしたがりすぎだ、とも思う。
 他人の人生、一国の命運、歴史、そんなものを担い、動かす能力など人間にはないではないか。主義を持たぬ者が、主義者達に翻弄される話でもある。なんとも感想としてまとまりがないが、まさにタイトル通り「ヒューマン・ファクター」を語り上げる物語だった。
 よどみなく流れる翻訳も素晴らしいと思う。

2021年12月12日日曜日

「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」メモ

もっとも幸せな瞬間は、未来にある

リーダーシップとは、人が持つ価値と潜在能力を明確に伝え、本人がその存在に気付いて刺激をうけられるようにすることである。

◆著者マルケ氏の、人間(部下やそれ以外の人々)に対する優しさと公平さ
・会社に貢献する気持ちも、仕事に対する思い入れややりがいも失った社員は、組織の利益をむしばみ同僚のやる気をそぐ。確かに利益の損失も甚大だが、私の感覚としては、彼らが失った喜びや幸福巻の喪失の大きさは、その比ではないように思う。p.9 

・誰もが自分の仕事に満足している世界を思い浮かべてみてほしい。そこは、誰もが自分の知力を存分に発揮し、自分を高めたいという意欲に満ち溢れた世界だ。人間という種に授けられた認知の力を存分に使い、目の前に問題が現れるたびに解決していく姿がそこにはある。p.15

・乗員の稼ぎを増やすためにできることと言えば、昇進のチャンスを最大限に生かせるようにしてやることぐらいしかない。私はそのためにできることを必死でやった。p.228

・もう12月だが、評価表の提出期限は9月15日だった。昇進審議会が開かれても、彼のファイルが不完全であれば、昇進のチャンスはゼロになる。上等兵曹の評価ですらこの扱いなら、かれより立場の低い水兵はどんな扱いを受けているというのだ?p.49
①部下の昇進やキャリア形成に対する上司としての責任。
②人事にもとめられる公平性。
③業務手順を守ることが、組織としての信頼性を高める。
 
◆行動を変える/意識を変える
・問題解決の責任を各自に負わせることで、自分は欠かせない存在だと各自が意識するようになる。(ただし、責任転嫁ではなく、最終責任は上司が負う覚悟が必要だとは思う。)
・優れた成果をあげることよりもミスを犯さないことにエネルギーを注いでいないか?
・ミスについて深く理解することが優れた仕事につながる。ミスが起きた場合には、なぜ起きたのか原因を深く追求し、ミスを排除するために必要な措置を理解する。これは責任追及のために行うのではなく、これから先同様のミスを起こさないようにするために行う。
・決断を下す者が情報のある場所へ降りていく。
・これまでとは違う行動をとらせることから始める。そうすれば新しい考え方は後からついてくる。
・立場が下の者は、最初から「完璧」なものを上の者に見せようとする。そういう思いはそれまでの努力を無駄にしてしまいかねず、効率を悪くする。早めに見せて、目指すものとのズレが無いか確認をする。上の者の意志や、助言は早い段階で確認することで早めに小刻みに軌道修正をはかったほうが効率が良い。
・(上の者が)「早めに短く言葉を交わす」というのは、部下に命令するという意味ではなく、一足早く進み具合を報告をする機会を作っているのだ。そうすることで、引き続き部下の責任で問題解決にあたってもらえる。それに、そういう機会を通じて、成し遂げたいことを部下にはっきりと理解させることもできる。それで何時間もの時間を無駄にせずにすむ。

権限を委譲する/委ねるリーダーシップ
・権限の委譲の背後にはトップダウン構造が潜んでいる。その行為の中核には、部下に権限を「譲ってやる」という考え方があり、リーダーには部下に権限を委譲できる権力や能力があると暗示している。

●「視認責任」の導入
 現場で行われる活動の一つ一つを中間職のリーダーがその場に立ち会って自分の目で確認し
上官への説明責任を果たすしくみを作る。
●具体的な決定権限を下ろす。(休暇に関する稟議の決定権者を下ろすことによって、関連する諸々の服務関連の把握を現場の長がおこなうように変更)
●計画書に現場の責任者の記名欄を設け、全ての活動に現場で権限と責任を持つものを表示。

自発性を高める言葉の力
・「これから〜をします」という言い方の導入。指示待ちにせず、自分の責任において為すべきことを考え、進言し、上司の承認を取る。
 【上司に従うだけの言い方】      【権限が自分にある言い方】
   ●〜の許可をお願いしたいのですが    ●これから〜をします
   ●〜できればと考えています       ●私の計画では〜
   ●何をすべきか教えてください      ●〜をするつもりです
   ●どうすべきだとお考えですか      ●〜をしましょう
   ●何ができるでしょうか 

・部下の当事者意識や責任者意識を損なわせるメッセージを無意識に発していないか。

委ねるために(委ねられるために)技能(技術)を高める
・権限を下に委譲するにつれ、あらゆるレベルの乗員に技術的な知識があることが重要になる
・物事を判断する力を高めたいなら、判断の基となる確かな技術的知識が必要になる。p.177
常に学ぶ
・私は、「いつどこでも学ぶ者でいる」と意識するようになったことで、精神的に安定し、ものの見方が広がった。p.185

繰り返し伝える
・大事なメッセージは、しつこいほど繰り返し伝える必要がある
・すぐに受け入れられる人もいれば、受け入れに時間がかかる人もいる

目標設定/目標を正しく共有/信頼
・目標を定めるときには、成果が測れるかどうかを意識するとよい。p.243
・将来のビジョンを同僚や部下とともに描くときには、具体的で成果が数値でわかる目標を定めることが重要。
・部下の目標について話し合うときは、相手が抱える問題に親身になって相談にのる必要がある。個人的に支援する姿勢を示せば、部下のことを考えて行動し、彼らが達成したいことをつねに頭に描いているのだと分かってもらえる。

行動指針/判断の基準
・たとえば、査定をするときや報告を書くときは、行動指針にある言葉を積極的に使わせた。「M軍曹は、勇気と積極性を持って報告し・・・」p.236
・行動指針を判断の基準とすることは、組織の正しい理解につながる。p.237

委ねる(委ねられる)ために必要なもの。知識と技術。そして学び続ける。
・本当に必要なのは、命令系統からの解放、すなわち自由である。自由というのは、人が生まれ持った才能やエネルギー、創造性を認め、それを存分に発揮させることを意味する。
・自ら判断して行動出来る環境が整い、高い技能と正しい理解が備わったとき、自由が生まれる。自由な状態で仕事をしているとわかれば、権限を委譲する必要はなくなる。というよりも、上の立場の人間の力を頼りにしなくなったのだから、権限を委譲するということ自体ができなくなるのだ。p.275 

・決断を下すうえで、彼らに何が必要になるかを理解する。何かと接するときは、的確な専門的知識、組織の目標に対する深い理解、決断を下す権限、状況に応じた決断を下す責任が必要になる、と覚えておくとよい。p.266

・私は組織にはそれぞれ個性があり、一つとして同じものはないのだと知った。組織で働く人の育った環境も、権限を許容するレベルも、自由に対する感じ方も、人によって異なる。p.279

・結局のところ、誰よりも支配しないといけない相手は自分自身である。p.280 

委ねるリーダーシップ
 【部下に命じる構造の打開策の成功例】
●作業を細かく見るのではなく、作業をする人を細かく観察した。
●報告の数や確認する箇所は増やさず、むしろ減らした。
●リーダーシップを振りかざして命令に従うだけの「フォロワーシップ」を助長させず、自分が一歩下がることであらゆるレベルでリーダーシップを発揮させた。 p.262 

2021年12月4日土曜日

0310 米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方

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書 名 「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」 
原 題 「Turn the Ship Around!」2012年
著 者 L・デビッド・マルケ 
翻訳者 花塚 恵 
出 版 東洋経済新報社 2014年6月 
単行本 285ページ 
初 読 2021年12月15日    
ISBN-10 4492045325 
ISBN-13 978-4492045329 
読書メーター   https://bookmeter.com/reviews/102854935
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 自分が仕事ができていると感じているときの充足感、自分がきちんと業務にひいては社会にコミットしている、と思えたときの健全な満足感は、人が仕事をして、それによって長い人生を生きていく上でとても大切で、必要なものだ。

 この本は、組織を構成する一人ひとりがそのような状態になることを、リーダーとしてどうやって意識的に作っていくことができるかを、潜水艦というある意味特殊で閉鎖された環境のなかで実践したことの、記録、というか報告のようなもの。
 潜水艦で、という環境が面白い。
 原子力潜水艦は、一度出航したら何ヶ月も母港に戻らず、浮上すらしないまま長時間の航海が可能で、100名程度の乗員は、狭い艦内で、極めて緊密な関係のなかで缶詰になる。
そのため、組織運営に不確定な要素をもたらす外的な刺激はかなり単純化されていると思える。
・業務は高度に組織化されていて、出来・不出来は一目瞭然。
・ついでにいうと、そのような環境で長時間能力を維持することを求められる乗員は、海軍でも「エリート」に属し、精神的にも安定して強靱で、他者との協調性が高く、意欲的な人物が選抜されているとみてよい。

 そのようなエリート集団であっても、軍組織という上意下達、上官には絶対服従、しかも艦内(艦長の権限は極めて強大)という環境で、専制的でダメなトップのもとでは腐ってしまうのだ。自分の仕事が評価されない。自分が組織の中で役に立っていると思えない。自分が十分に能力を発揮できていない、という思いは、簡単に人間を腐らせ、本来の能力まで奪ってしまう。
 この本は、そのような状態に陥っていた米攻撃型原子力潜水艦〈サンタフェ〉(ロサンゼルス級)の艦長に任じられた著者のマルケ(当時大佐)が、部下に権限を委譲するなかで、部下一人ひとりの責任と判断を尊重し、部下のやる気と充足感を高め、その結果一隻の潜水艦の能力を飛躍的に向上させた実践を簡潔にまとめたものである。
 組織のメンバーが有機的に結びつき、エネルギーが正しく流れるときの無駄のない業務の進行と、それに関わるメンバーの健全な人間関係は、ひとことで言ってしまえばとても“気持ちの良い”ものだ。それを、自分の部下に味あわせることは、いわば組織の上に立つものの責務ではないだろうか。今の自分にそれができているだろうか。という反省も浮かんでくるが、これもまた、健全な反省であるべきだ。
 この本(最強組織の方)を、単に読み物として楽しむもよし、我が身にあてはめて、工夫のヒントとするもよし、何回でも手にとって楽しめそうな、珍しくも有用なハウツー本、ビジネス本だと思う。

 ちょっと脱線するが、H・ポール・ホンジンガーの『栄光の旗のもとに』は、まさに〈サンタフェ〉と同じ状況で新艦長に引き継がれた駆逐艦〈カンバーランド〉を、新任艦長が乗員の自信を回復して最優秀艦に育てる話でもある。この「最強組織」が2012年刊、「栄光の」が2012年に書かれ、2013年に刊行されたのは偶然かな? 真っ黒な円筒型のステルス宇宙艦は、駆逐艦とはいえど、ほぼ潜水艦のようなもの。全長、艦内の構造、乗員数も原潜と似たりよったりだ。リーダーシップを試行して、結果を確認するのに丁度良い規模と環境である、とも言える。


 これは余談。表紙の写真は、ロサンゼルス級原潜〈サンタフェ〉ではない。S112ってどこの艦だろう?国旗はギリシャに見えるけど。せめて米原潜の写真が使えればよかったのにねえ。
 さらに余談。各見開きページの左上のイラスト表示の潜水艦の艦影が第二次世界大戦の頃の姿だ。現代の潜水艦はもっと丸い。
 このあたりのビジュアルにもっと凝ってくれたらよかったのに。。。。。(ちょっと残念。)

2021年12月1日水曜日

2021年11月の読書メーター

 11月は、とにかく潜水艦本でした。
 読めて良かった。ハンターキラーシリーズ♥️ そのエピソード、本当にいるの?とか、言いたいことが思い浮かばないでもないが、それはいいんだ。とにかく潜水艦が潜り、水上艦は波頭を割って走り、SEALは敵地に侵入する。それだけで読み応え十分で満足。これは、潜水艦の、潜水艦乗りによるの潜水艦好きのための話なのだ。
 そして、発行から3度目の11月にして遂に読むことができた『11月に去り者』
 奇しくも読み始めたのは11月22日、ケネディ暗殺の日。これは孤独な男の叶わなかった愛の物語。切なく、苦しく、愛おしい。
 同じくハーパーBOOKSから12月に発行されるジェフリー・アーチャーの新刊『まだ見ぬ敵はそこにいる』のプルーフ版先読み。面白かった!何度も書いているが、版権とったハーパーすごい。これからもどんどん攻めて、良い本を沢山出してほしい。


11月に去りし者 (ハーパーBOOKS)11月に去りし者 (ハーパーBOOKS)感想
街全体がジャズのスウィングに身を委ねているニューオーリンズ。ネオンと紫煙とウイスキーと女。裏社会の人脈と危険な仕事。ギャングとしてかなりの地位を築いていたフランク・ギドリーは、自分が頼まれた些細な仕事がケネディ大統領暗殺に関わりがあると気づく。そして、その秘密のために自分が消されると直感し、逃亡せざるを得なくなる。裏社会の仕組みは骨の髄までしみこんでいるから自分が殺される理屈は理解できる、だがそれを受け入れるかどうかは別問題。一方、追跡を命じられた男も淡々と義務を果たす。なぜならそれしか生き方がない。
読了日:11月28日 著者:ルー バーニー

潜水艦のメカニズム完全ガイド潜水艦のメカニズム完全ガイド感想
目下、凝り性および収集癖が猛烈に作動中。いくつか潜水艦の解説本を手に取ったが、これが一番説明が丁寧で読みやすい。潜水艦の構造やバラストタンクのしくみや、水中の音波の原理など。一応知っておくだけで、潜水艦ものの軍事スリラーの理解が深まる。パラパラめくっただけで、誤植がみつかったのはご愛敬。
読了日:11月27日 著者:佐野 正

完全版 最強 世界の潜水艦図鑑完全版 最強 世界の潜水艦図鑑
上の本と合わせてパラパラと。視点が違ったり、解説の濃淡もあるので、両方手にして損はなし。分かったような気分で潜水艦ものの小説を読めるようになる。


潜水艦完全ファイル (万物図鑑シリーズ)潜水艦完全ファイル (万物図鑑シリーズ)感想
Kindle Unlimitedで。写真満載文字少なめなので、昼休憩中にサクッと。
読了日:11月24日 著者:中村秀樹

ハンターキラー 東京核攻撃 下 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 東京核攻撃 下 (ハヤカワ文庫NV)感想
イスラム武闘組織による米原潜の乗っ取りと核兵器の積み込み、本当にこんなに上手くいくのだろうか?とか、北朝鮮のクーデターは、ほとんど『潜航せよ』と似たり寄ったりだとか、本筋とはほとんど関係なく血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる随親子とか。まあ、陳腐なところもあるっちゃああるが、ジョン・ワード准将の苦悩とジム候補生の頑張りと、駆逐艦ヒギンズ艦長や原潜トピーカのチャップマン艦長のプロ意識と奮闘でおつりが来る。やはりこれは潜水艦乗りによる潜水艦のための小説なのだ。
読了日:11月22日 著者:ジョージ ウォーレス,ドン キース

ハンターキラー 東京核攻撃 上 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 東京核攻撃 上 (ハヤカワ文庫NV)感想
ハンターキラー3作目。今回は日本も舞台に。横須賀基地の旧大日本帝国海軍司令部だった洞窟が米軍の司令部に転用されている描写に心がざわめく。ジョン・ワードの息子は海軍兵学校の四年生でグアムで潜水艦乗務実習に。子供が手を離れた妻のエレンは大学の植物学の研究に戻って、タイで学生を引率して野生の蘭の植生調査に。フィリピンではイスラム超過激派の武闘集団が世界を核戦争に導く事を画策し、北朝鮮では老軍事指導者がやはり核戦争を仕組む。これにアジアの麻薬王の親子の確執が絡み、麻薬捜査官キンケイドもフィリピンで隠密捜査中。
読了日:11月20日 著者:ジョージ ウォーレス,ドン キース

ハンターキラー 潜航せよ〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 潜航せよ〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)感想
下巻に入り、ビーマン率いるSEALsの任務はどんどん難易度が上がってくる。ちょっと昼寝している暇にそこらを散歩してロシア大統領を奪取してこい。そして彼らを迎えにくるグラスの潜水艦〈トレド〉も、狭いフィヨルドの中で対潜艦3隻+ヘリ一機を相手に戦い抜く。一方海上のイージス艦で前線指揮をとるワードは、ロシア原潜を密かに追いつめる。ロシア駆逐艦vs米原潜、米巡洋艦vsロシア原潜。いずれも経験値の差が勝負を分けたか。他方米証券市場を舞台にした民間パート、もっと本筋に絡んでくるのかと思いきや、ほとんど絡まずに終了。
読了日:11月16日 著者:ジョージ・ウォーレス,ドン・キース

ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)感想
間をおかずに再読です。前のレビューで間違い。 ジョン・ワードは大西洋潜水艦隊の司令官の一人で、第6戦隊を指揮しているようだ。やっぱりワードが好きだなあ。
読了日:11月15日 著者:ジョージ・ウォーレス,ドン・キース

まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ハーパーBOOKS, H165)まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ハーパーBOOKS, H165)感想
先読みプルーフ版が当たって、レビューも先出しです。なのでネタバレはなしで。とにかく、ラストまで読み終わって叫ぶよね。「だから、見えない敵はどこにいるんだぁ!!」と。 伏線と回収、どんでんにつぐどんでん。時間をかけた地道な捜査と逮捕劇、そして、弁護士一家の面目躍如の裁判劇。それなのに、まだ巨悪は影も見えないではないか。なんということだ、このまま、次巻まで待たねばならないとは。なにより、終盤で湧き起こった問題にどう落とし前を付けてくれるのか。気になって仕方ない。なにはともあれ、めっちゃ面白い。オススメ。
読了日:11月11日 著者:ジェフリー・アーチャー

ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 潜航せよ〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)感想
SASを「空軍特殊部隊」と訳す痛恨のミス。SASは特殊空挺部隊で陸軍の精鋭中の精鋭。小説での登場も多いが、たとえばリーバス警部は訓練落伍組、マクシム少佐は2期を務めあげた錬達の兵士。そのほか多数。あと、大尉を「若い下士官」としているのは誤訳か脱字か?下士官と下級士官、一字あるかないかで大違いだ。なおいずれもストーリーにはまったく影響はない。共著者の一人がもと原潜の艦長なだけに、原潜内のあれこれや人間関係の描写は精緻で非常に魅力的。その分敵役が平凡に見えてしまうのは前巻の『最後の任務』と同様。
読了日:11月09日 著者:ジョージ・ウォーレス,ドン・キース

ハンターキラー 最後の任務 下 (ハヤカワ文庫NV)ハンターキラー 最後の任務 下 (ハヤカワ文庫NV)感想
さて、下巻です。反政府指導者、麻薬捜査官、現地潜入のSEAL、潜水艦と細かくパートを刻んでくるが、さすがにペースが上がってスリルも高まる。潜水艦パートは安定の面白さ。《エル・ファルコーネ》の正体は予想通りで、これに気付かない麻薬王のしょぼさが際立つ。一方の潜水艦艦長ワードが部下思いで有能。一糸乱れれぬ艦内の統率ぶりはただただ気持ちよい。長期間の単独行動をむねとする潜水艦の艦長は裁量の幅が広く、自立心旺盛でクセがつよい、またそれでこそ有能・・・ということで、意に沿わない指令には断固として抵抗も。
読了日:11月03日 著者:ジョージ ウォーレス,ドン キース

読書メーター

2021年11月28日日曜日

0309 11月に去りし者 (ハーパーBOOKS)

書 名 「11月に去りし者」 
原 題 「NOVEMBER ROAD」2018年
著 者 ルー・バーニー 
翻訳者 加賀山 卓朗 
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2019年9月 
文 庫 456ページ 
初 読 2021年11月22日 
読書メーター    
ISBN-10 4596541221 
ISBN-13 978-4596541222 
 1963年11月。裏路地の薄汚いバーや、安っぽいガウンからおっぱいをぽろりと出している娼婦まで、街全体がジャズのスウィングに身を委ねているニューオーリンズ。熱い湿気とネオンと紫煙とウイスキーと女。美味い料理、そして、マフィア。賄賂と裏社会の人脈と危険な仕事。ギャングとしてかなりの地位を築いていたフランク・ギドリーは、11月22日、全米を震撼させた事件を知った。そして、自分が頼まれた些細な仕事が、ケネディ大統領暗殺に関わりがあると直感する。
 暗殺者に仕立てられた男、実行犯であるスナイパーを手配した男、スナイパーに武器を調達した男・・・・・犯行に関係したと思しき人間が次々に消されていく。自分にも殺し屋が差し向けられるのか。今この瞬間に? この俺に?

 15歳で(おそらくは)生まれ育った貧しい家を出て、ニューオーリンズで万引きで命をつなぎ、ギャングに気に入られて使い走りをしているうちに頭角を現して、今やイタリアン・マフィアのカルロス・マルチェロ(実在のニューオーリンズのマフィア・wikiカルロス・マルセロ参照)のNo.3となっているギドリー。ボスには信頼されていると思っていたが。結局は使い走りの延長線にすぎないのか。

カルロス・マルチェロはケネディ兄弟の兄、ロバート・ケネディと因縁があり、それが暗殺事件の背景の一端として語られている。
 だけど、そんなこたあ、どうでも良い。

 たった今ままで、裏社会とはいえ人生を謳歌していたいい男が、突如命を狙われることになり、逃亡せざるを得なくなる。裏社会の仕組みは骨の髄までしみこんでいるから自分が殺される理屈は理解できる、だがそれを受け入れるのは別問題だ。一方、追跡を命じられた男も淡々と義務を果たす。なぜならそれが仕事で、それしか生き方がない。すべてが、ボードの上のチップの代わりに自分の命を置かれたゲームのようだが、やがてその中に、紛れもなく尊いものが現れる。初めはゆきずりに利用しただけだったが、自分とは違う人間の真摯な生が、かけがえのない絶対的なものになる。そしてその存在が、ギドリーの忘れようとしたはずの過去をも揺り動かす。
 孤独な男達が、それぞれに行き掛かり上道連れができて、自分で目論んだ以上の関係がもたらされる。結局は人間と、情と、愛。
 ギドリーの魅力と孤独に。バローネの虚無に。ついでにセラフィーヌの愛の深さとしたたかさに。読んで、よじれて、ジタバタする。胸が苦しくて泣きそうになったら、俺のために泣いてくれ。モン・シェール。
 
翻訳がめちゃくちゃ良い。翻訳者は加賀山卓朗氏。ジョン・ル・カレ、デニス・ルヘイン、クロフツ、グレアム・グリーン、ロバート・B・パーカー、その他を訳出されている方だ。私の積読1000冊(すみません。反省してます。)のなかにずいぶんありそう。これは読まねば。

2021年11月27日土曜日

映画『ウルフズ・コール』ネタバレあり


2019年のフランス映画です。
もう一つの潜水艦映画。
これを見ると、アメリカ映画ってやっぱりエンターテイメントなんだなあ、と実感する。
(当たり前だが)フランス語が溢れる発令所の中も米原潜とはひと味もふた味も違う。面白い。

「ウルフズ・コール」とは、謎の潜水艦が発するソナー音のこと。フランスの特殊部隊を支援する作戦任務中にこの音に遭遇した音響鑑定士のシャンテレッドは混乱して、艦種の特定や敵味方の識別に手間取り、艦と仲間の特殊部隊員を危険に晒してしまう。任務の失敗から潜水艦乗務をはずされてしまうシャンテレッドだが、どうしてもあの狼の鳴き声が頭から離れない——————

 アメリカ映画なら、ここから、敵の不明艦の探索と対決、という一大スペクタクルに展開する流れだが、そうはならないフランスのエスプリ。
 
 全身全霊集中して見たけど、2度、3度みたいとは思わないくらいシビアな世界だ。現実寄りの核戦争の恐怖と潜水艦戦の非情な世界を描き出している。細部まで集中して見て、見終わったあとに、自分の中に吹き荒れる感情を鎮めながら諸々を考える。そんな映画。見る価値ありの名作です。(と、思うのだけど、Amazonのレビューはいまいち振るわないようだ。そりゃあ、ハリウッド並みのスペクタクルを望んではいけない。これはフランス映画だからね!もうちょっと大人で、もうちょっとしっとりしているのだ。たとえ戦争映画であっても。)

 主人公は鋭敏な聴覚を武器に海中で戦う『音響鑑定士』。水中の小さな音まで聞き取り、敵か味方か、艦種や武装の種類まで鑑定する。通り名は「黄金の耳」、渾名は「靴下(ソックス)」。渾名の由来は耳が良すぎて自分の足音が気になってしまうため、数ヶ月の潜水艦乗務の間、靴を履かずに靴下だけで過ごしたから。聴覚だけでなく人柄全般的にセンシティブな男。
 ひたすらヘッドホンから海中のすべての音に耳を澄ませ、作戦の遂行も中止も、攻撃するかしないかも、鋭敏なシャンテレッドの耳が聞き取る音とそれに下される鑑定にかかっている。こんな繊細な奴が、何ヶ月もこんな仕事をしていたら心を病んでしまうんじゃないだろうか。でも艦長のグランシャンは彼を信頼している。

 「狼の鳴き声」を放つ謎の音紋の潜水艦による欺瞞作戦のために、フランスは核戦争の引き金に指をかけてしまう。フランスの新鋭戦略核ミサイル原子力潜水艦(SSBN)レフローヤブル号を指揮するのは、シャンテレッドが尊敬するグランシャン艦長。その原潜は大統領からの核攻撃命令を受けて潜航し、いまや核攻撃の最終段階にある。電波も通信も届かない潜水艦には核攻撃中止命令も届かない。そして、潜水艦艦長に与えられた大統領命令は絶対不可侵で変更や取消は不可能・・・・・て、謎の潜水艦などそっちのけで、味方同士の潜水艦による核戦争回避のための戦い−−−−−つまりはどうやって潜航する潜水艦(味方)の位置を特定し、核攻撃中止を伝えるか、さもなければ−−−−−っていう超絶鬱展開。これを魅せる人間ドラマが良いのだ。レフローヤブルを追うために、もう一つの潜水艦チタン号に移乗して指揮を執る潜水艦部隊司令官(「私もかつては潜水艦艦長だ」)もまた、シャンテレッドの能力を信頼する。そして、レフローヤブルからの魚雷を受けて大破し、沈降していくチタンの中で、司令官は、シャンテレッドを艦外に脱出させるのだ。シャンテレッドが得たもの、そして失ったもの。

 字幕だと、登場人物の階級がまったく分からないのだが、肩章である程度把握できる。シャンテレッドは少尉。チタンの艦長で中盤レフローヤブルの艦長になるグランシャンは中佐、チタンの副長だったドルシは少佐だったが艦長に昇任して中佐に。司令官は上級中将だ。音響分析センターの長官(?)も中佐。
 大麻の一件は、彼がやっていたのではなく、彼女が手巻き煙草で吸っていたのを副流煙で吸収していた、ということかな、と。彼女を責める方向に話が向かないのも“らしい”と思った。大人の世界だなあ、と。(自分が納得できるかどうかは別問題。)あと、勤務オフの時もシャンテレッドがヘッドホンをしているのは、音楽を聴いているというより、もしかしたらノイズキャンセリングのためかもしれない、とも思った。
 ラストの、音のない静かな世界は、聴覚を失ったシャンテレッドの世界を表現しているんだよね。彼女が後ろから近づいてくる気配も感じ取ることができなくなったシャンテレッドは、これからどんな世界を生きて行くのだろう。

 この映画は真夜中に部屋を暗くして、ヘッドホン推奨。シャンレテレッドの聴いたものを、聴け!

 

2021年11月26日金曜日

海・駆逐艦・潜水艦

 いつの間にか、戦闘艦好きになっている。いちおう自分に念押しするが、これでも平和主義者だ。戦争反対・軍備反対。だけど、なぜか軍艦ものが好きだ。人間は矛盾に満ちた存在だ。
 生まれながらの平和主義者だった息子が、いつの間にやら銃器マニアに育っているのもなぜだ? 言っておくが、私のせいではない。息子のヘンな進化に気付くまでは、銃器や兵器の話なぞ、家の中ではしたこともなかったし、BB弾のピストルのおもちゃだって持たせたことは無かったのだ。
 そういえば、どう考えても反戦主義者だろうと思える宮崎駿氏も、戦闘機への憧れが捨てられなかったように。
 戦うという目的のためだけに作られた無駄な無機物に、どうして人は愛を感じてしまうのだろうか。
 ひょっとして、そうやって、創作と空想の世界に野蛮な欲求を昇華させることで、本能的な闘争心を宥めているのだろうか。

 しかし、この気持ちはやはり「愛」。船の代名詞が『彼女』なのにも心震える。
 というわけで。動いている戦艦見たさに映画を見る。ストーリーは二の次でよし。操舵号令にうっとりとする。
戦争映画の傑作。ロバート・ミッチャムの駆逐艦艦長とクルト・ユルゲンスのUボート艦長が、海面の上と下で頭脳戦を繰り広げる。大好きなシーンはなんといっても、敵潜水艦から放たれた二本の魚雷の航跡が、艦すれすれに通り過ぎていくシーン。『Uボート』が戦争の悲惨を描いているとすれば、こちらは娯楽映画のレベル。Uボートの艦内もこぎれいで、映画『Uボート』との描き方の違いを感じる。原作のシビアさと比べても、あっかるいアメリカ映画の仕上がりだが、米海軍の協力を得て作成された本物の駆逐艦の爆雷投下シーンは圧巻。


『バトル・シップ』
近未来SFのくせに、戦艦ミズーリが主役。老兵がそりゃあ楽しげに艦を操ってる。ボイラーに点火するシーンがお気に入り。「耳をふさいどれよ!」 字幕・日本語吹き替え、どちらも味わいがある。戦艦が波を蹴って進むシーンが壮観。一番好きなのは、窯の火が落ちて死んでいた艦に電源が入り、息を吹き返えしていくところ。




『Under Siege』
こちらも戦艦ミズーリ。第二次大戦中に就役した戦艦が、近代化改修を経て湾岸戦争時まで活躍していたとは知らなかった。バトル・シップはミズーリがハワイで記念艦になってからの話だが、こちらは、退役前最後の航海で艦内で反乱が起きる話。スティーブン・セガールがマイペースな奴で面白い。ヒロイン役の女優さんが、とても美し可愛い。
 この映画の見所はなんといっても主砲をぶっ放すところだな。揚弾機で弾薬を砲尾まで持ち上げて、装薬して撃つ。ダグラス・リーマンの小説を読んでいても、実際の揚弾の様子なんてわからなかったからね。なるほど〜、と。


こちらは、米攻撃型原子力潜水艦。一番お気に入りのシーンは、前半、潜水艦の出航シーン。「よし、潜ろう」「ダイブ・ダイブ」のかけ声で、艦長、副長、その他幹部士官が発令所の海図台(?なのか)の前と横に前方を向いて陣取り、腕を組んで直立不動。潜行する艦が前のめりに斜めになっても、潜水艦乗りの誇りにかけて、どこにも掴まったりするものか、と体を斜めにして踏ん張るシーンが、大好き。あと、ラストシーン、ロシアの駆逐艦隊(多分)に護衛されて真っすぐ北海洋上を航行する、USS《アーカンソー》。字幕、日本語吹替え、どちらも味わいがあるが、日本語吹替え版は、細かいセリフで状況説明を自然に補ってくれていて、俳優の細かい表情や小さな目配せなどの仕草の意味がはっきりして印象が際立つ。良い翻訳だと思う。ちなみにとってもハンサムな航海長のパークは韓国系の朴さんだろうな。


原作『駆逐艦キーリング』 第二次世界大戦に米国が参戦して間もない1942年初旬。大西洋はドイツのUボートによるウルフパックに席捲され、連合国側の通商網は大打撃を受けている。護送船団を組み、それを護衛する米駆逐艦《グレイハウンド》とコルベット艦。お気に入りのシーンは、戦闘とかではなく、ラストの梯型で洋上を進むグレイハウンドと僚艦だったりする。
2020年に航海、ではなく公開予定だったが、コロナのあおりで劇場公開はされず、アップルTVが独占配信。映画館の大画面・大音響にかぶりつきで、荒天の荒波を頭から被る勢いで鑑賞するのを1年も前から楽しみにしていたので、残念ではあった。
アップルTVは、最初の試聴期間はタダなので、ユーザーでない方もぜひ観てみてください。いつか劇場で観たいです。




2019年フランス映画。アメリカの潜水艦映画とはひと味もふた味も違うエスプリ。潜水艦の「音」の世界を垣間見ることができる。有線誘導の魚雷ってこんな感じなのか、とか、沈没する潜水艦からの緊急脱出ってこういうものなのか、とか。小説『ハンターキラー』でも描かれる潜水艦艦長の忠誠心の強さや独立独行の作戦遂行能力の高さゆえに、抑止力としての戦略核の運用を、潜水艦に担わせることのリスクにも考えさせられてしまった。プライムビデオの見放題に入っていないのが残念ではあるが、レンタル料払って見る価値アリの名作だと思います。
おまけ『Uボート』
これは「楽しむ」映画ではない。戦争の悲惨さに愕然とするための映画。戦争映画で思わず高揚してしまったら、これを観て反省しよう。