2017年8月22日火曜日

0050 ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話

書 名 「ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話」 
著 者 オットー・ペンズラー  
翻訳者 小林 宏明
出 版 早川書房  2010年8月
初 読 2017/08/22

 ひとまず、冒頭のケン・ブルーウン、ロバート・クレイス祭りの流れでクレイス/コール&パイク、私にも馴染みのある数少ない主人公の一人であるリンカーン・ライムの章だけ読んだ。
 それ以外はまた後ほど。
 読んだこともないのに、ブルーウンが面白すぎて爆笑。リンカーン・ライムは短編小説になっていてちょっと得した気分。
 コールは一人称が「おれ」になっていてかなりの違和感あり。「わたし」か「僕」の方が良いなあ。パイクのパートは素晴らしい!の一言に尽きるけど、ある意味、人物の種明かしなので、人によっては読まないほうがいいんじゃないかな。とも思った。
引用 「わたしは人間を描く。わたしが達成感を味わうのは、意表を突くプロットを思いついたときではなく、キャラクターの陰影が読者を共感させたり、感動させたり、夢中にさせたりしたときだ。(中略)人間を深いところで理解したと思ったときのほうが、喜びは大きい」「私が書いているのは、(中略)人間のまったき理解の仕方なのだ。」
 完全に同意。私は読んでいて入り組んだ謎解きよりも、登場人物の存在の理解に力が入る。クレイスとは相性がいい。でも、パイクの造形ついて、あまり詳しく解説しないほうがいいんでない?と思わないでもなかったのだ。

2017年8月19日土曜日

0049 サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール

書 名 「サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「Sunset Express」1997年 
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 高橋玖美子 
出 版 扶桑社 2000年3月
初 読 2017/08/19

 C&P6作目。
 純なコールが迂闊にも強者の悪意に騙される。
 それだけだと読むのがツラいが、ルーシーとの恋が絡んでコールが騙されるのも止むなしと思わされるところが上手い。コールの恋の為なら子守も辞さないパイク超万能!
 利用された事に気づいた後半の巻返しは爽快だが「そこから派生したあらゆることが、自分の人生にこれほど長く尾を引く深刻な打撃を与えようとは思いもしなかった」というプロローグを読み返すにつれ、グリーンを撃ち殺したくなるのはパイクだけじゃない。
 その後のコールの災難を読んだ後となっては奴を締め殺してやりたい。

 クレイス祭りも終盤。残すところは『破壊天使』と『ホステージ』、コール&パイクはこれで邦訳は読み切った。本当はここからの4作をじっくり邦訳で読みたいのに。このシリーズはここからシリアスモードに突入するんだよ!
 『天使の護衛』の後のパイク主役シリーズもなかなか良さそうなのに。ああ、残念。この巻には、思わず励まされるような良い台詞が沢山あった。
 P「たぶん。だが、不都合があれば俺たちが正す」 
 ギブス「それでも、連中はまちがってて、われわれは正しい。その過程で銃弾を浴びなきゃならないのなら、浴びるまでだ」
 「大事なのは司法制度の悪い部分じゃなくて、いい部分だ。悪い部分は正していかなきゃならない」
 「あなたが正義と呼びたいものをわたしたちに与えてくれるのは、人間だけだわ」

 ここのところ、ほぼ仕事から逃避するように読書にのめり込んでいたが、最後の最後でコールに元気づけられてしまった。しゃーない。私も頑張るかあ。(ちなみに司法とは関係ない) 
 ついでに守護神パイクの恋愛指南
 「こいつが寂しがるだろう」(コールを見ながら、ルイジアナに戻るルーシーへ)
 「頭がどうかしてるぞ。最後の夜なのにこんな話をしている場合か」

2017年8月10日木曜日

0048 天使の護衛

書 名 「天使の護衛」 
原 題 「Stalking the Angel」 1992年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 村上 和久 
出 版 武田ランダムハウスジャパン 2011年8月
初 読 2017/08/10

 C&P11作目。
 三人称で語られることでCとPの輪郭がいっそうはっきり立ち上がる。
 正直、本当の意味で、コールの格好良さに気付いた。コールは前作(The Forgotten Man)でショットガンで撃たれて重傷を負っており、本作ではまだ自宅で療養・回復中の身である。にもかかわらず、自由にならない体をおして、パイクの為に活動する姿が実にタフで有能でクールで格好よいのだ。
 一方のパイクは父に虐待された生い立ちから、「家族」というものに抱くあこがれのような特別な感情、ラーキンへの思い、コールとの友情などが、スリリングな事件の展開と絡み合いながらパイクらしくハードに表現される。「愛している」は蛇足だ、とは思ったけど、それも込みでパイクなのかも。とにかくこれまで邦訳されたシリーズでは、ターミネーターの印象しかなかった(笑)パイクの印象を改めることになる一冊。

 ストーリーとしては、ラーキンとパイクのあれこれがメインのはずなんだけど、脇を手堅く固めるコールがいぶし銀のごとく輝いていて、ラーキンがかすむ。。。。。やっぱり、コール&パイクだよねえ。
 解説等ではパイク主役のスピンオフってことになってるが、紛れもなくC&Pの11作目だと思う。

 蛇足ながら、不思議と痛くないやりかたで殴られるって、それ痛くないんじゃなくて解離してるだけだから!虐待から心理的に逃避してるんだよ?
 悲惨な育ち方で、身近に守ってくれるものがなかったからこそ、人として正しく行動し、他人を守れる人間になりたいと願うパイク。しかし世間の標準とはちょっと価値基準がズレてるので、組織の中では上手くいかない。結局パイクが選択した自分の正しさを実践できる生き方は傭兵だったのだ。
 コールの存在は、パイクにとって最も価値あるもののうちのひとつなのだろう。
 「自分がコールの背後を掩護していなかったら、たぶんコールは殺されるだろう」というのがコールのパートナーをやってきた理由。だから前作の負傷を引きずり、自分の身をまもるのもおぼつかないであろうコールに危険を持ち込んだ事を悲しんでもいる。そんな2人の友情と共闘が胸熱である。

2017年8月7日月曜日

0047 追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「STALKING THE ANGEL」1989年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 田村義進 
出 版 新潮文庫 1992年3月
初 読 2017/08/07

 一人クレイス祭り続行中。C&P第2作。
 正直妙な日本文化には閉口するけどまあそれはいい。コールが初めから最後まで関与しないほうが、ミミの為には良かったんじゃないの??というのは言わぬが花。
 今回の仕事は盗まれた日本の古書「葉隠」の捜索。手がかりを求めて乗り込んだヤクザの事務所でいきなり刺青やら小指のない男やらと遭遇して乱闘寸前。ノリは三文アクション映画である。そうこうしている内に依頼者の娘ミミが誘拐されてしまい、護衛に失敗したと落ち込むコールが実にカワイイ。
 内心心配して様子を見に来るパイクはさらに良い。

 事件は例によってどんどん深刻化。ついには殺人に発展。事態を阻止できなかったことをコールは悔やんでさらに落ち込むが、そんなコールに守護神パイク。
 酔っ払ったコールがパイクに電話を掛けた30分後には瞬間移動したかのように居間にいて、台所でオムレツとイチゴジャムトーストを作り「こっちへこい」。黙って食べたコールに「話せるか?」そして、コールの話を微動だにせずに聴くのだよ。 
 C&Pの何がいいって、この二人の関係性がいいのだ。コールもパイクも基本的にサバイバーで、辛ければ辛いほど、それを言葉にできなくなる。(幼少時から周りの他者(親や大人達)に助けられた経験が乏しいから。)それをわかってるパイクはまずはコールに食事を食べさせて、コールの心のハードルを下げてから「話せるか?」と問うんだよね。さりげないシーンが胸に来る。

 今回のパイク語録。
 C「まずいな。飛行機に乗るつもりかもしれない。」
 P「だいじょうぶだ。撃ち落とせばいい」ほんとに出来そうで怖い。

 「葉隠」は秘伝なんで読んで覚えたら本は燃やせと伝えられていて、だから原書は残っておらず伝承されているのは写本で、しかも何冊もあるんだ、とか、写本である以上、文化財的価値はさておき、精神的価値は、そこらの出版物と大して変わらず、そんなもののために日本人は殺し合いはしないだろう、とかはこの際どーでも良い。
 サムライは紅白のハチマキはしないし、ソバ入りのミソスープは勘弁してほしい。でもいい。どーせ亜米利加人の描いた軽めのミステリーなんだから!コールとパイクが格好良ければそれで良いのだ!

【再読C&P祭り!『指名手配』刊行記念】
 初読時はコールが好きすぎて興奮状態だったが、今回はさすがに落ち着いて読めた。
 その分、コールの男っぷりと優しさが染みわたる。依頼人の娘ミミの境遇に本気で腹を立て、心底心配して力を尽くそうとするコール。事件の結末は苦すぎて、どれだけ酒を飲んでも足りないが、「苦痛を取りのぞいてくれる者が愛してくれる者なら、それはあなただ。」というジリアンの言葉は最大の慰めだろう。ハガクレやヘンな日本文化には今回も目をつぶる。

 「そこに置いてあるウィーバー社製のバーベキュー・グリルの下に、ネコはうずくまっていた。大きくて、意地が悪くて、真っ黒。片方の耳は立っているが、もう一方の耳は横に倒れていて、そこにクモの巣のような白い傷跡が残っている。誰かに撃たれたのである。それ以来、まともではなくなった。」
 コール若かりし頃から同居している黒猫さん。「わたしも11ヶ月ヴェトナムにいたが、・・・」「ヴェトナム以降、おまえさんは自分自身の子供の部分にしがみついてきた。」2作目は、過去の従軍体験への言及は少なめ。カルヴァーシティの射撃場の主リックは、海兵隊に12年いて、そのうち8年間は射撃班に所属。そんな彼が嬉しそうに目を細めて眺めるパイク。そういえば、コールの年齢その他はあらかた推測できているが、パイクは何歳なんだろう。

2017年7月31日月曜日

0046 死者の河を渉る―探偵エルヴィス・コール

書 名 「死者の河を渉る」
原 題 「Voodoo River」1995年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 2000年1月 

この巻、最初からコールは人恋しさ全開で、なんだか子犬のようだ。 今回は有名女優の実親捜しの依頼。依頼人から紹介されたルイジアナの女性弁護士ルーシーにコールは恋をする。コールの胸のときめきが伝染してこっちまで胸が苦しくなる。ルーシーと8歳の一人息子の輪に加わるコールが幸せのお裾分けをもらったよう。 一方シリーズ当初はベトナム帰りの社会不適応者にしか見えなかったパイクであるが、もはや超人レベル。 コールが空港で、ルーシーを事件捜査のパートナーとして紹介しただけで、コールの恋人だと理解してルーシーの手にキスって、一体どんなセンサーを搭載してるの(笑)、てか、女性の手にキスをするような機能を完備していたとは!事件そのものは、36年前の殺人に端を発し、現在の不法移民に関わる犯罪がからみ、暗い河が象徴する社会の暗部、不法移民に関わる裏組織との取引やハードな銃撃戦など、息つく暇もなく読み応えがある。 自分に課した依頼人への忠誠と、社会悪に対する正義感が対立して、葛藤するコールの誠実さが好きだ。その悩めるコールを気分転換させるために運動に誘って、話相手をするパイクの言葉が、これまた良い。「愛情は、差し出された時に拒絶する余裕があるほど、ざらに転がっているものじゃない。」パイク語録に追加しておこう。

2017年7月29日土曜日

0045 ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「FREE FALL」1993年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子 
出 版 扶桑社 1996年10月

 いよいよ筆致鮮やかなC&Pシリーズ第四作。
 今度は恋人の素行調査の依頼。
 ただの浮気かと思いきや事態はどんどん深刻化、事は警官による黒人青年暴行死事件の真相へと発展。1992年のロス暴動を下敷きに1993年にこの本を書いたクレイスもタフだと思う。
 依頼人のジェニファーに個人的にかなりむかつく。
 純粋なのかもしれんが身勝手すぎるだろ。人を巻き込んでおいてそれか?1,2発張り倒したい。コールは女性に優しいからそんなことは絶対にしないけどね。
 今回は殺人の濡れ衣を着せられ、逮捕→拘留→脱走→拳銃にモノを言わせたのち、司法取引の流れ。パイクが相変わらず格好よい。
 C「付けられている」
 P「撃ち殺せ」
 単純すっきり。
 「正直に答えてくれ、ルー。わたしの容疑を聞いたとき、本当にやったと思ったか」
 ポイトラスは首を横に振った。「思わなかった。グリッグスもだ」

 聞かずにはいられなかったコールの心情がやいかに。
 終盤の特殊部隊の軍事行動ばりの悪党掃討作戦は著者のファンサービスか? 元海兵隊というだけで連帯できる単純野郎どもめ。なんだかうらやましいぞ。

2017年7月24日月曜日

0044 モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール」
原 題 「The Monkey's Raincoat」1987年
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 田村義進
出 版 新潮文庫 1989年2月

  C&P第1作。
 80年代 の空気感と西海岸の陽光とハードボイルドの交じり具合が絶妙。
 ベトナムでの泥沼の戦場体験があっても自分なりの前向きな生き方と正義を貫いて生き抜いてきた、コールの精神の強さが魅力。
 ちゃんと小さなコトにも怒ったりイラついたりできる、そういう感情が摩滅していないことが大事なのだと思う。
 子供と依頼者を守る為なら危険の中にもあえて踏み込んで行く。人殺しは好きではないが、反撃は躊躇しない。周りに悪人の死体の山ができても、警察に怒られても、ボロボロになりながらもあくまでも人助けはさらりとやる。推理よりは荒事寄りのロスの探偵である。
 コールのことを「ハウンド・ドッグ」という渾名で呼ぶ、ルー・ポイトラスとコールの関係も気になる。ルーの台詞「きみはいつも深入りしすぎる。依頼主に近づきすぎる。ときには恋心さえ抱く。ちがうか?」 ルーの上司バイシェも出番は少ないながら刑事魂を発揮して地味に良い。

《コールの来歴》
 生まれた時の名前はフィリップ・ジェームズ・コール。6歳の時に、プレスリーにかぶれた母に強引に改名されるが、「母がくれた名だから」という理由で今も名前を戻すことはしない。18歳の時ベトナムの水田にいた。ベトナム戦争に2年間従軍。1987年刊行の本書で35歳なので、逆算して1952年生まれ。(最新巻の『指名手配』が2008年頃と想定すると56歳くらいになってる。)従って1970年に18歳でベトナム戦争に行き、2年間従軍して1972年のベトナム戦争終結ののち除隊。計算は合う。
 その後はロスに戻って撮影所の警備の仕事をへて、探偵事務所の見習い。この頃同じく海兵隊を除隊して警官になっていたパイクと知り合う。28歳で探偵免許を得て開業。「美しいものはみな子供の心のなかにある。」14歳が理想の年齢。ちなみに、ヴェトナムで特殊部隊っていうからつい、グリーンベレーかと思っていたが、レンジャー部隊だったことが9作目の「Last Ditective」で判明。涙なしには読めない名作なのに、本邦未訳!残念すぎる。

《エルヴィス・コールとハリー・ボッシュ》
 同じくロス在住のボッシュは1950年生まれでコールより2歳年上である。従軍も2年早い。二人ともウッドローウィルソンドライブに家があり、コールはマルホランド・ドライブ(峠)を挟んで南側斜面のハリウッド側。ボッシュは北側斜面でスタジオシティ側に家を構えている。
 家庭に恵まれず施設で育ったという設定も似ていて、その分「我が家」に対する思い入れが強いのも同じ。ちなみに作者のクレイスとコナリーは友人同士だそうで、ボッシュとコールは、それぞれの作品にちらりと友情出演している。
 コールは、ボッシュの家の前をランニングすることがあるらしく、ロス大地震の後、家の前で上半身裸で瓦礫の片付けをしていたボッシュを見かけ、その刺青で彼がナム帰りと知って、黙って片付けを手伝ったんだそうな。このロス市警の刑事にコールは密かに敬意を持っている。このあたりが書かれてるクレイス作品は前述の「Last Ditective」で、残念ながら翻訳出版されていない。

《最恐チート・パイク》
 コールとの出会いはベトナムから帰還後の1973年。ベトナムでは特殊部隊に所属していたコールを「優秀な兵士」として尊敬している。パイクは海兵隊で、スナイパーだったらしい。グレイマンやヴィクターには及ばないかもしれないが、十分主役張れるだけの最恐チート級であるパイクをさらりと脇で使ってるこの贅沢。

2017年7月22日土曜日

0043 約束 (創元推理文庫) —コール&パイク16

書 名 「約束」
原 題  「THE PROMISE」2015年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 創元推理文庫 2017年5月

 C&Pの16作目。S&Mとしては2作目で、夢の共演。
 コールがパイクのことをおしゃれ感ゼロとか言ってるが、貴方がた何歳になってるの?ベトナム従軍当時20歳だったんだから、この作品が2008年と仮定すると、56歳だね?!
 多少は落ち着いて少々渋みが増したものの、相変わらずの体言止めだし、パイクの方も相変わらずの筋肉美。某NATOの少佐みたいに時代は進んでも年取らない系のアレか?同居している黒猫さんはララバイ・タウンの黒猫さんなんだな?猫又まであと何年だ?
 とはいえ、やはりカッコイイものはカッコイイし、素敵なものは素敵なのだ。
 今回は特に、ジョンが素敵。
 パイクとマギーの会話も良し。「よくかえってきたな。海兵隊員」

 真面目で不器用なスコットは、今度はコールの事件に巻き込まれて、爆弾を仕掛けられるやら殺し屋に狙われるやら、散々なあげくに懲戒免職の危機。それでも自分の筋は通したい意地っ張りなんだが、色々と不運なのも相変わらずだ。
 スコットみたいに善良な人間は、コールみたいな訳の分からんエネルギーに溢れた人間の側に寄ると巻き込まれて大変な目にあうらしい。殺されなかったのは、ひとえにマギーの愛のおかげゆえ。マギーとスコットがあまり危ない目に遭わずに、安心して読める続編を希望する。

 マギーを取り上げられて、コールん家で涙目になってるスコットをさりげなく気遣うコールが優しい。スコットもエミリーも全部引っくるめて何とかしてしまうところがさすが。やられっぱなしのスコットも今回はきっちりと落とし前をつけることができたし、コールにちょっとしたロマンスが芽生えたりもして、最後にはジョンがきっちり〆める、三度くらい美味しい作品だった。ちょっとこんがららりはしたけど。

 この本の中でいちばんコールらしい、と思った台詞。「(前略)そんなことはどうだっていい。気がかりなのはエイミーだ。わたしはこの女性を守りたい。ヘスがなにをしているのか突きとめて、もしそれが気にいらなかったら、チャールズやコリンスキーと同様、彼女も仕留める」これに対してパイク。「いいノリだ」 すなわち自分が正義だ、といって憚らないこの俠気がコールだよ。あととにかくジョンが格好良い。

【料理で読む】
 コールが自宅の台所で作るラム肉のローストとトマト、コリアンダー、パラペーニョ、クスクスのサラダが美味しそう。それをタッパーに詰めてジョンにお届けする気配り(笑)。落ち込むスコットにも夕ご飯を振る舞おうとするし、私もコールが作ったご飯を食べてみたい!と思ったのでした。


2017年7月21日金曜日

0042 ララバイ・タウン

書 名 「ララバイ・タウン」
原 題 「Lullaby Town」1992年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 1994年7月

 C&P3作目。シリーズ初読。
 トレンチコートの似合う無口で渋い男が出てくるのがハードボイルドだと思ってたらどうやら違うらしい。ロサンゼルスの陽光のもと、マスタードのシミ付きミッキー柄スウェットシャツでコールが登場、過剰な軽口が体言止めで畳みかけてくる。
 仕事の依頼は、ハリウッドの有名映画監督(たぶん、スピルバーグと同じくらい?)ピーター・アラン・ネルソンの、無名時代の妻と子供の捜索。ピーターは甘やかされた芸術家肌の有名人にありがちな抑制の効かない男で、今回は10年も逢っていない息子の事を思い出し「父親」になりたくなったらしい。
 仕事を引き受け、足取りを追い、案外簡単にピーターのかつての妻と息子の居場所に辿り着く。それでは簡単すぎるな、と思っていたら、その元妻カレンが、務めている銀行で、ニューヨークのマフィアのマネーロンダリングに関与していることが判ってくる。
 マフィアのしがらみからなんとか彼女を引きだそうとしているうちに、ピーターが乱入して事態を引っかき回し、結局カレンもピーターもまとめて助ける羽目になる。
 コールは、女性や子供や社会的弱者に対してフェアで、しかもとことん優しい。これは損得抜き。そして彼らを脅かす敵には容赦無い。
 コールは、不遇な中から自分で自分を育てたタイプの人間で、彼の強さも弱さも、そこに由来する。そのゆらぎが最大の魅力で、つい引き寄せられる。
 コールとパイクはニューヨークで上等の宿をとり、美術館に出かけ、美味い食事をする。それで少しは人生が楽になると知っている。コールを支えるパイクがこれまた良い。
「おれが行くまで生きているように。」

2017年7月12日水曜日

0041 容疑者

書 名 「容疑者」
原 題 「Suspect」2014年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 創元推理文庫 2014年9月

 もう、たまらんぞ。
 メスのジャーマン・シェパードの軍用犬マギーはハンドラーと共にアフガニスタンにいた。9.11の後、「テロとの戦い」のために米軍がアフガニスタンに侵攻し(アフガニスタン紛争)、タリバンによる自爆テロが増加してきたのが2006〜7年頃と何かで読んだ。
 なので、この本の時期を推定2007年と仮定。
 軍用犬マギーとハンドラーの別れのエピソードが切ない。戦死したハンドラーを守って味方の米兵にも牙をむくマギー。彼女もまた負傷していた。
 一方、パトロール中の銃撃事件で相棒を失ったスコットも、銃創の後遺症で心身ともに満身創痍だった。復職後、警察犬隊を希望したスコットを厳しく見守る上司のリーランド。軍から払い下げられてきたマギーと、第一線から退いても現場にしがみつこうとしているスコット、一人と一頭は出会うべくして出会う。お互いにPTSD持ちだったが、スコットが同じくパートナーを失い戦闘で傷ついたマギーに寄り添い、労りながら信頼関係を深めていく過程は限りなく優しい。そして部下と犬、双方を見守る上司のリーランドがまた良い。事件の謎解きは、これ、ミステリなのかい?と思うほどのあっさりモードだが、でも良いのだ。クレイスは、謎解きを書きたいのではなくて、人を描きたいんだから。
 最後の「たっぷり二か月近くうちに住んで愛玩犬になってたのは誰だ」というリーランドのセリフに、スコットの入院中めいいっぱいマギーを可愛がっていたリーランドの姿がうかんでニヤリとなる。