2021年5月14日金曜日

0269 もう過去はいらない(創元推理文庫)

書 名 「もう過去はいらない」 
原 題 「DON'T EVER LOOK BACK」2014年 
著 者 ダニエル・フリードマン 
翻訳者 野口 百合子  
出 版 創元推理文庫 2015年8月 
文 庫 368ページ
ISBN-10 448812206X
ISBN-13 978-4488122065
初 読 2021年5月9日

 主人公バルーク・シャッツ(元警官)88歳。付属品は歩行器と357マグナム。過剰な暴力に閉口する。とりあえず殴りつける、得物はブラックジャック、しかも骨折させたり脳に障害が残るような力で。尋問はそれから。尋問すらしない場合もある。傷つけることだけが目的なことも。
 バックのやり方は気分が悪いし許容できないし、正直読んていてドン引きするのだが、「自分が生きている世界は厳しく不公正で残酷だ」と骨の髄から思い定めているユダヤ人としてのバックの世界観は良いとか悪いとかのこちら側の気持ちではなく、「あるもの」として受けとろう、と途中で思い直した。
 公平でも優しくも正義でもないと認識している世界で、合衆国という白人キリスト教徒が支配する人種差別国家国に生まれて、妻と子と母と、地域のユダヤ人社会を守りながら、地域社会の治安に携わることを仕事にしたユダヤ人の生き方であれば、こうもなるのだろうか?
 一方で、大泥棒イライジャはバックの合わせ鏡のようだ。なぜ、正しくも公平でもないとわかっているルールに従う必要があるのか。ルールに従っても世界は守ってくれない、どうせ殺されるなら、力あるものから好きに奪ってなにが悪い。イライジャのやり口や理屈は、虐げられる側の心をくすぐる。
 この因縁の2人が、50年ぶりの邂逅。
 怪我も癒えきらず、移動には車いすや歩行器が必要な88歳が、またしても犯罪に巻き込まれる。
 物語は2009年と1965年を行き来しながら、バックの今は亡き息子ブライアンの“バル・ミツヴァ”———ユダヤ教徒の13歳になる男子の成人の儀式(ものすごく大事)———成人と見なされるとはいえ思春期の入り口の息子の鋭利な批判に耐えるバックの心情も絡めて進むのだが。
 いろいろと言いたいことが無いわけではない。登場するユダヤ人の描写が強欲であざとい泥棒、銀行家、小ずるい小悪党、窃盗犯・・・・である意味ステレオタイプで、作者がユダヤ系でなければちょっとこれもドン引きしたろうし。
 それでも、終盤330pのバックのセリフですべておつりが来る。
「自分はナチと闘う側だった。もし覚えて居てくれる人がいるなら、おれはそう記憶されたい。そして警察では、身を守るすべのない女子供を好んで襲うやつらをつかまえるために全力をつくした。だが、守護者としての警察の存在意義がほんとうはだれのためなのかわかっているし、法と掟と社会の安定でいちばん得をするのがだれなのかもわかっている。・・・・・・」
 
 とりあえず、じーさんの矜持が格好よい。よくぞ死なず、殺されず、88歳まで生きていた。
 こいつはミステリじゃなくて、ハードボイルドだった、と再認識したのだった。


 




2021年5月7日金曜日

0268 もう年はとれない (創元推理文庫)

書 名 「もう年はとれない」 
原 題 「DON'T EVER GET OLD」2012年 
著 者 ダニエル・フリードマン 
翻訳者 野口 百合子  
出 版 創元推理文庫 2014年8月 
文 庫 382ページ 
ISBN-10 4488122051 
ISBN-13 978-4488122058
初 読 2021年5月8日
 ダニエル・シルヴァの流れで、ユダヤ人とナチの話を敢えて選んだ訳ではないのだが。結果的にそういうことになった。

話の筋とはほとんどまったく関係ないが、今年の読書の流れ的に目にとまった一節————「たとえ筋金入りのリベラル主義者でも、ユダヤ人のほぼ全員が大なり小なりイスラエル国家に愛情を抱いている。イスラエルは、ホロコーストのような歴史的犯罪を招いた二流のマイノリティの地位から、ユダヤ民族が脱けだす決意を象徴している。また、大いにありうるとされている将来の迫害において、最後の避難所でもある。そして、われわれの破滅をたくらむ勢力に対する防御は、大国の政府からの庇護を乞うたり買ったりするのではなく、ユダヤ人の主権と軍隊をもっておおこなわれるべきだという、シオニストの新年を体現している。イスラエルは、焼かれるのにうんざりして自分でたいまつを持ちたかった曾祖父ハーシェルのような人たちの国だ。—————
 
 主人公バルーク・シャッツは87歳ながら矍鑠とした、もとメンフィス警察刑事。ユダヤ人。戒律を守ることには熱心ではないが、ユダヤ人コミュニティの中で老後を送っている。かつては毒舌以上にその拳銃でならした名物刑事だったが、とうに引退した現在は、妻と二人で、肉体の衰えや痴呆症を、諦め受け入れつつも、怖れながら静かに暮らして・・・・・いたのに。
 この期に及んで、突如わきおこる逃亡ナチ戦犯にからむ騒動。
 ユダヤ人の彼は、かつて第二次大戦・ノルマンディー上陸に兵士として加わり、ヨーロッパでドイツの捕虜となったときに、彼がユダヤ人であったことから捕虜収容所で殺されかける。そのとき直接手を下したナチ将校は、終戦時死んでいたはずだった。しかしその男が身元を偽りドイツを脱出していたことが明らかになり。しかも、ナチスの金塊を携えて。
 作中88歳を迎えるという年齢のバックにとっては、もう生きているとは思えない逃亡ナチス戦犯も、その男が隠匿していたかもしれない金塊も、それに目がくらんだ死んだ戦友の家族も、さらにおこぼれに預かろうとにわかに身辺にあらわれた破綻しかけた牧師も、その美しい妻も、残り少ない彼の時間を浪費しようという邪魔者以外のなにものでもない。ただただ迷惑、そして困惑。それでも、身に降りかかった火の粉ははらわないといけないし、なぜかナチのお宝に夢中になった孫息子にも目配りしないといけないし。
 ナチスやユダヤ人問題に鋭く切り込もう、という意欲作ではなくて、欲に絡めとられて人生を破綻させられるちっせえ人々の中で、88歳のバック(バルーク)・シャッツの達観と、そして腹の底から(?)にじみでる気概が実に格好良い。それに、乾いた毒舌が絶妙である。このように年を取りたいか・・・・・といわれるとちょっと遠慮しときたいような気もするが、世の中にはこんなじーさんもいなくては!とも思う。
 それにしても、孫のテキーラが、ちょっと普通にまぬけ過ぎてイヤ(笑)

2021年5月6日木曜日

0267 接続戦闘分隊: 暗闇のパトロール (ハヤカワ文庫SF) 

書 名 「接続戦闘分隊」 
原 題 「THE RED  First Light」2013年 
著 者 リンダ・ナガタ 
翻訳者 中原  尚哉 
出 版 早川書房 2018年9月 
初 読 2021年5月6日
文 庫 553ページ 
ISBN-10 4150121982 
ISBN-13 978-4150121983

 近未来SF,というかもろサイバーパンク。生身の人間に感覚器官を拡張する機器を装着してネットワークに直接接続する強化兵士のユニット「リンクド・コンバット・スクワッドー接続戦闘分隊−」による戦い、と思いきや、そういう近未来ガジェットが当たり前となった軍隊でさらに進んだサイバネティクスが実験的に導入され、よりサイボーグに近くなった主人公。
 冒頭、アフリカの局地戦から、軍需産業の思惑に振り回されて重傷を負う主人公。負傷により、より進んだサイバネティクス義肢を装着することになり、治療—訓練—模擬戦・・・・・と進んだと思いきや、突然の小型核爆弾による同時多発テロの発生。アメリカは大混乱・・・・。しかしてその原因が、主人公シェリーの脳内をもハックしている通称「レッド」・・・クラウド上に存在している正体不明のハッキングソフトウェアの排除のための、民間軍需産業側の暴走・・・? とにかく斜面を転がる雪玉の如く、どんどん話が大きくなっていく。そして、なんと、完結しない! 米国では3部作として出版され、またしてもハヤカワ、一冊目しか翻訳出版していない模様だ。『栄光の旗のもとに』の二の舞。面白いだけに、中原氏の翻訳作品なだけに、残念、というか、もはやハヤカワが恨めしい。
 こちら読者の方は、もとは1冊のペーパーバックだったのを無理矢理上下巻、とか薄くて高い上中下巻なんかを、文句も言わずに買ってやってるじゃないか。それなら出版社だって、3部完結の本なら3部腹をくくって出してほしいよね。そんなわけで、この一冊では、まだまだ物語は端緒についたばかり、の風情です。これからどれだけストーリーが変容していくのか、想像持つきません。くっそー、続き読ませてくれよ。
 一つだけ。現代の自動車爆弾テロもイヤだが、それと同じ感覚で核爆弾テロが可能な世の中はもっとイヤだ。そんな世の中がこないよう、やはり核開発と核拡散は徹底的に管理すべきだと思う。


2021年5月2日日曜日

0265-66 暗殺者の悔恨 上・下(ハヤカワ文庫)

書 名 「暗殺者の悔恨 上」 
原 題 「One Minute Out (Gray Man) 」 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 (2020/11/19) 
初 読 2021/0/02
文 庫 420ページ 
ISBN-10 4150414726 
ISBN-13 978-4150414726

 
 
 とりあえず、我らがグレイマン、コートランド・ジェントリー君に送る言葉がある。
その1「下手の考え休むに似たり。」
その2「案ずるより産むが安し」

まあ、ジェントリーの本能、もしくは制御不能な暴れ馬的良心が選んだ道は決して「泰く」はないがね。

 ともかくも、グリーニーの実験におつきあいせねばならぬこの巻。書くのも今更感が半端ないが、ジェントリーの一人称現在型である。いやあ、慣れるのに手間取ったよね。ジェントリーの思考が何の役にも立っていないのに冗長で。(笑)
 ええ、笑ってあげるよ。なんといってもジェントリーのことだもの。何度、おまえもう黙って働けや、と思ったことか。PIT(逃走車両の後部に追跡車両がぶつけて相手の車を止める技術)を仕掛ける段になって2ページにも及ぶ解説。それも、たいして具体的ではなく、俺はCIAでコレを習った。その後も自分で習熟した。おれなら出来る。やるんだジェントリーって、さあ。いいから黙ってやれや(笑) そうはいいつつも、さすがに読んでる内に慣れてきたか?やっとストーリーに入り込めそうな。

 で、さて今回の彼の任務は、CIAではない、個人の請負仕事。かつてボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で大量虐殺を行った軍事指導者の暗殺である。遠距離から一発で仕留めればよいものを、つい、危険かつお節介な「良心」が蠢く。あんな悪いやつを苦しみもなく一発で仕留めるのが正義なのか? そう、彼にとってもはやNGワードに近い「正義」の発動である。そして、その正義感に突き動かされるまま、もっと残酷に殺すために、屋敷に侵入する。ところがその屋敷は人身売買組織の中継基地で、中にはうら若い女性達が捕らわれ、そしてジェントリーのしたことの責任を彼女達が負わされることになると知り。もはやぐだぐだである。
 だが、そのぐだぐだをなんとか凌ぐ技倆を持っているからこそのグレイマン。追跡する途中で出会った女性を筆頭に、今回はなにやら女まみれになりそうな予感だ。
 
書 名 「暗殺者の悔恨 下」 
初 読 2021/0/02
文 庫 416ページ 
ISBN-10 4150414734 
ISBN-13 978-4150414733

で、下巻である。
 ようやく読む方も波にのってきた。当面の的が明確になるが、このパターンは、あれだ、『暗殺者の復讐』グレイマンに憧れる暗殺者の巻。グレイマンを振り回す姉のぐだぐだにわをかけて、グレイマンをぶん回す妹ロクサナかっけー!から始まる追跡劇。そして、ジェントリーは遂に、禁じ手を繰り出す。例のラングレー直通電話であるが。相変わらずスーザンはクソ。お友達のトラヴァースは相変わらずいいひとだ。そしてロマンティックも相変わらず。お父ちゃん、もういい年なのにがんばってるなあ、とニヤニヤする。
それはそうと冴え渡るジェントリーの独白(笑)、「こんな時には大学に行っていればよかったと・・・」・・・・と、キミ、大学に行けるほど頭がよかったのかねえ?とこっちも脳内でツッコミをいれる。
 そして、舞台はヴェネツィアに移り、さらにはロスへ。
 そのヴェネツィアの運河沿いの豪華なアパートメントの3階には、ひょっとしたら引退したガブリエル・アロンが静かに絵を描いているのではないか?とか、脳内で作品世界がオーバーラップする。そして、ロサンゼルスですよ。いやほんと、人質救出のエキスパートならいるじゃないですか、カルヴァーシティに! とか妄想でばくばくする。奇しくもジェントリーがかり出したロートルもナム世代。いやあ格好よいね、じーさん!
 とまあ、変な楽しみ方も織り交ぜつつ、ジェントリーの戦いを堪能する。女達が格好良いこと。か弱い被害者と思っていた女達も、正規軍への従軍歴があり戦える、というところに東欧の厳しさも垣間見る。男も女も格好よい。やっぱりグレイマン、最高です。

2021年5月1日土曜日

2021年4月の読書メーター

 今月は、びっくりするほど読めなかった。ほとんど漫画だし。こちらのブログにはコミックは登録しないことにしているので、実質1冊のみ。でもその一冊が、クレイスの『危険な男』だったのは満足。まあ、異動もあったし、行った先の職場も相当な忙しさだし、知らない事ばっかだし、残務もあるし、な。今月も読み友さん方のレビューに励まされた。世の中にはまだまだ知らない本が沢山!死ぬ前に読み尽くすのが私の夢だ。読み友の皆様ありがとう。なんとか一ヶ月乗り切り(?)ました。

4月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1432
ナイス数:548
危険な男 (創元推理文庫)危険な男 (創元推理文庫)の感想
パイクが思ったほど寡黙ではない。ちゃんと必要な事はしゃべってる。女の子へ気遣いする気持ちもある。やり方は知らん。ああ、安定のパイクかっけー!の一冊。みんな同じ事書いてるけど、「もう大丈夫だ。いま助け出す」に悶える。「なんなりと」と答えるコールに痺れ、パイクの手から黙ってTシャツを取り上げ、頭にかぶせてやるコールに・・・・・言葉がない。くうう〜💗 なんか想像したより話が小ぶりだな、と思わんでもないが(なにせ直前まで読んでいたのがガブリエルで、同じ本の厚さで地球を半周はする御仁だったので。)今回は、地元の
読了日:04月18日 著者:ロバート・クレイス

誰?  [青空文庫]誰? [青空文庫]の感想
読んだ。で、結局おまえは誰なのさ。と棚の上のブツに問う。
読了日:04月29日 著者:モリス・ルヴェル


ボールルームへようこそ(11) (講談社コミックス月刊マガジン)ボールルームへようこそ(11) (講談社コミックス月刊マガジン)の感想
今月は漫画月間になちゃいそうだなあ。それはおいて、ついに11巻です。祝、刊行。今回は決勝からのインターバル。多々良の負傷は気になるものの、釘宮さんがだんだんほぐれてきて、いい人+多々良のいい先輩がまた一人増えた感じ。作者の竹内友さん、体調はいかがかな。無理せずに描き進めて欲しいです。がんばれ〜🚩
読了日:04月21日 著者:竹内 友

モーメント 永遠の一瞬 14 (マーガレットコミックス)モーメント 永遠の一瞬 14 (マーガレットコミックス)の感想
追いかけているコミックス4冊をまとめ読み。ソチまでまだ8年もあるよぉ。冒頭にソチの現在を置いて、過去が追いかける手法が面白い。なになに、これから何があるんだ!というチラ見せ。
読了日:04月12日 著者:槇村 さとる

花よりも花の如く 20 (花とゆめCOMICS)花よりも花の如く 20 (花とゆめCOMICS)の感想
いやあ、長い長い。ここまでも、ここからも長い。丁寧っちゃ丁寧なんだが、脇役の顔が雑なのがイヤだ。
読了日:04月12日 著者:成田 美名子



2021年4月18日日曜日

0264 危険な男 (創元推理文庫) —コール&パイク18

書 名 「危険な男」 
原 題 「A Dangerous Man」2020年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋恭美子 
出 版 創元推理文庫 2021年1月 
文庫 480ページ 
ISBN-10 448811508X 
ISBN-13 978-4488115081 
初 読 2021年4月18日
「エルヴィス・コール探偵事務所、いまならひとつ分の料金で手がかりがふたつ。割引料金あり」
「手を貸してくれ」
コールの声が真剣になった。
「なんなりと」

 ジョー・パイク主役ものであっても、C&Pな由縁。パイクに手が必要になればコールが全力を尽くすし、コールに支援が必要であれば、パイクが駆けつける。すでに30年来の友情を「依存しあってる」と言い切っちゃうドレイコよ。それを言っちゃあおしまいじゃないか。あなた、思いっきり株を下げたよね。

 パイクは、酒乱の父親の暴力に晒されて育ち、コールは精神疾患の母に振り回されて、ついには捨てられた心理的虐待の過去を持つ。(公的な児童養護の世話になって育った経歴がハリー・ボッシュと共通するのは、過去にレビューでも触れたところ。)コールとパイクの二人がいかに過去の軛を受け入れ、乗り越えてきたか、については未訳の『L.A. Requiem (1999)』から『The Forgotten Man (2005)』までの翻訳刊行を大いに期待したい。それぞれが欠損をかかえた存在ではあるが、自分の人生で欠けた部分に向き合って、努力と奮闘で乗り越えてきたことが、お互いを信頼し尊敬する由縁。それを依存といわれちゃあね。

 さて、今作では「主役」パイクのエピソード多数。なかでも、彼が国防省のTS/SCI取扱許可証を持っている。というくだりは初耳。国防省の信頼の証し。国防省やCIAの請負仕事を数多くこなしてきた、という過去は、これまで邦訳ではあまり出てこなかった。ちらりとコートランド・ジェントリーを思い出す。大先輩だね♪ やっぱり、ジェントリーはロスでパイクの助力を求めればよかったんじゃないかと・・・・・(脱線)

 さて、本筋にもどろう。
 パイクが銀行に立ち寄ると、偶然にも銀行員の女性が白昼車に連れ込まれて誘拐される場面を目撃してしまう。追跡して難なく彼女、イザベルを救出。
「もう大丈夫だ。いま助けだす」 ああもう、助けてパイク!私も!とおねだりしたい。
 そのイザベルが、再度誘拐され、これは市中の捜査が必要、とみて、パイクはコールに助力を要請。それが冒頭のやり取り。コールの緩急の切り替えに悶える。

 さらに、イザベル救出の際、防弾ベストの上からとは言え、二発撃たれた衝撃で負傷しているパイクの着替えを手伝うコールに更に悶える。
 着替えのTシャツを、どうやったら痛みが少なく袖を通せるか、と思案するパイクの手からTシャツを黙って取り上げ、頭からかぶせて、パイクがゆっくりと腕を通せるよう、シャツを支えるコールは、さすがに気遣い上手である。て、いうか、どこにも語られちゃいないが、『The Forgotten Man』でコールが大怪我を負った後では、パイクの方が何くれとなく世話をしてやったんだろうな、とか妄想して、一人で勝手に悶える。とにかく、大好きなシリーズで、大好きな人達なので、いちいちページを繰る手がとまって妄想タイムが差し挟まり、読むのに時間がかかること甚だしい。
 無防備で敵の屋敷に侵入して銃撃戦で胸を撃たれたり(『モンキーズ・レインコート』)、全身を拳銃とサバイバルナイフで武装した状態で市中で警察に拘束されて、「戦争でもやるつもりか」と言われた(『ぬきさしならない依頼』)、シリーズ初期のころの描写と比べると、パイクの、ではなく著者の進化にもなんだかニヤニヤさせられる。最初の頃は、ベトナム帰還兵の社会不適合者としか思えなかったパイクも、いまでは米国政府の信任も厚い軍事請負人で、オーダーメイドの防弾ベストを常備し、市中では銃の所持に気をつかう立派な社会人に変貌している。戦争帰りの元軍人のイメージも情報量も、ランボーからだいぶ進化した。

 で、まあ今回保護の対象となった女の子二人が、あろうことかメールで居場所を教え合っていたらしい、とか、言語道断だったりするものの、そこはあえてさらりと受け流し、救出のため、連邦保安官やロス市警の刑事と連携しての突入作戦。場所は映画監督ピーター・アラン・ネルソンの別荘。ああ、豪勢な屋敷が殺戮の舞台に・・・・・でも、まあ、コールのやることであれば、ピーターは許してくれるだろう。次の映画のネタにされるかもしれんが。
 パイクとコールの息の合った突入作戦、自然と連邦保安官も主導するパイクの指揮官ぶりも素敵。ストーリにさほどひねりがないのはいつものことで、いいのだ、これはコールとパイクの友情とひととなりを悶え楽しむ本なので。。。。(爆)


2021年4月17日土曜日

ロバート・クレイス作品一覧(4/18更新)


ロバート・クレイス作品一覧 
  (1989年 新潮文庫)  The Monkey's Raincoat (1987)
  (1992年 新潮文庫)  Stalking the Angel (1989) 
  (1994年 扶桑社ミステリー)Lullaby Town (1992) 
  (1996年 扶桑社ミステリー) Free Fall (1993) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Voodoo River (1995) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Sunset Expres (1996) シェイマス賞長編部門受賞 
7 Indigo Slam (1997)        コール&パイク7
8 L.A. Requiem (1999)     コール&パイク8
11 The Last Detective (2003)   コール&パイク9
12 The Forgotten Man (2005)  コール&パイク10
13 The Two-Minute Rule (2006) 
14 天使の護衛(2011年 RHブックス・プラス) 
  The Watchman (2007)   コール&パイク11(ジョー・パイク1)
15 Chasing Darkness (2008) コール&パイク12
16 The First Rule (2010)    コール&パイク13(ジョー・パイク2)
17 The Sentry (2011)         コール&パイク14(ジョー・パイク3)
18  Taken (2012)                コール&パイク15(ジョー・パイク4)
19 容疑者(2014年 創元推理文庫) Suspect (2013)  (スコット&マギー1)
20 約束(2017年 創元推理文庫) The Promise (2015) (スコット&マギー2)コール&パイク16
21 指名手配(2019年 創元推理文庫) The Wanted (2017)   コール&パイク17
22 危険な男(2021年 創元推理文庫) A Dangerous Man(2020)コール&パイク18(ジョー・パイク5)
23 Racing the Light(2022)  コール&パイク19
24 The Big Empty(2025)    コール&パイク20

2021年4月15日木曜日

雑感。

気付いたら、左の手のひらになぜか内出血のあざが出来ていた。
どこにもぶつけた覚えないんだけどな。
やだな〜
こうやって、いきなり脳の血管も切れたりするんだろうか。

最近ストレスが減じて、いきなり血圧が下がったばかりなのにな。
本を全部読み終わるまで、死にたくないものだ。

2021年4月11日日曜日

世界地図

先日、よく行く書店の店先で古地図の復刻版を扱う書店さんが店開きしていた。
書斎の壁に飾ったら雰囲気アップするかも、と思い、世界図を2枚購入。
写真上が、1835年のアンリー作 世界図
写真下が、1587年のオルテリウス作 世界図

上のは、アジアで販売するために造られたんだって。下は大航海時代の後期に入った頃か。ユーラシア大陸西側とアフリカはかなり正確になってきている。日本については、まだジパングって感じだ。夏の海洋冒険モノの読書のお供に。

ちなみに地図より額装の方が高くついた。(^^ゞ

2021年4月6日火曜日

2021年3月の読書メーター


4月1日(木) 今日から新しい職場です。引継ぎにに伺ったらめちゃくちゃ大変そうだったけど、通勤で読書時間は取れそう。
4月2日(金)新職場2日目。こんな時間(23時過ぎ)に職場を出るが、これでも前職場より2時間は早い。それに軌道に乗れば、もっとずっと早く帰れるはず!職場は空が広くて、花壇の花が綺麗で、池があって、近所の人がお昼にレジャーシート引いて子供とランチしてる。もう二度と本社には戻らない、と堅く心に誓う。
4月3日(土) 久しぶりに二度寝して、起きたのは昼の12時近く。久しくしていなかった掃除をしたり、昼間に買い物に出たり、冬物を片付けて春物と入れ替えたり。何気ない日常全てが新鮮。
4月4日(日) 今日は残務整理で前職場へ来ている。すると後任さんも来た。そりゃあ不安だろう。私も前任から引き継いだ3年前は、あまりにも訳が分からず、病んだ。今だから言えるが。上司にわーって何か言われて、脳の表面にざーっと砂嵐のようなサージが流れたとき、これはまずい、と思ったね。昨年はさらにコロナで大変な事に。今は憑き物が落ちたような心境になってる。さて、もう少し頑張る。
4月5日(月) 今日は雨だったので、昼の散歩は出来ず。机上整理と業務の把握。いろいろと大変ではあるが。なんだか落ち着かず、読書に手がつかない。どんなにメンタルヤバくても、読書ができているうちは大丈夫だと思えたこの3年。基本、ストレスは本を買い漁ることで解消。溜まる一方の積ん読がストレスに転じたら、もう生きていけないかも(!)と本気で思った日々よさようなら。(ホントか?)

3月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:2292
ナイス数:656

過去からの密使 (ハーパーBOOKS)過去からの密使 (ハーパーBOOKS)の感想
【海外作品読書会】面白かった!先に読んだ最新巻『教皇のスパイ』が原点回帰なら、こちらはまさに現在の“アロン長官”の面目躍如、大活躍の一冊。今回はロシアの某大統領とかつての二重スパイ相手に完全勝利。現実のジャーナリスト殺害事件を上手く絡めて、上等のエスピオナージ+かつての敵との友情+成長物語的な、というそれだけでも垂涎ものの極上品です。前回では苦い敗北を喫し、盟友MI6のグレアム・シーモアやCIAエイドリアンとの友情までボロボロにされたガブリエルだったが、今回の共闘で完全復活したようだ。よかった。
読了日:03月28日 著者:ダニエル シルヴァ
教皇のスパイ (ハーパーBOOKS)教皇のスパイ (ハーパーBOOKS)の感想
シリーズ最高峰! ガブリエルシリーズの良いとこ取りです。キアラとのラブラブ、幼い可愛い双子、旧友ドナーティとの探索行、そして諜報と怒り。ローマ教皇パウロ7世が逝去、教皇の死因に疑問を持ったドナーティがベネツィアで家族と休暇中のガブリエルに助力を求める。教皇がガブリエルに渡そうとしていたものはどこに持ち去られたのか。二千年に渡るユダヤ人迫害の運命を定めたマタイの福音書の記述は正しいのか。ユダヤ人問題とキリスト教の罪に深く迫りながら、傑出したエンタメでもありつづけるシリーズに拍手。ラファエルがガブに生き写し。
読了日:03月20日 著者:ダニエル シルヴァ
誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか (柏艪舎文芸シリーズ)誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか (柏艪舎文芸シリーズ)の感想
「誤訳」に対する姿勢が私と完全一致していて失笑。言い分は正しい。ほぼ曇りなく正しい。課題は、どれだけ翻訳に対する厳しい姿勢を述べようと、この方のクレジットで出版されている誤訳本の存在は消えてなくならない、ということか。若干自意識が鼻につくところもあり、まさに「文は人なり」だが、これはもちろん私自身にだって当てはまること。「翻訳の技術の中で最も重要なのは、日本語を書く技術だということになり、翻訳者には原著者以上の文章力が要求される」(これは慶応大教授池尾和人氏からの孫引き)まさに、ね。
読了日:03月14日 著者:山本光伸
赤の女 下 (ハーパーBOOKS)赤の女 下 (ハーパーBOOKS)の感想
《第176回海外作品読書会》前回までの「テロとの戦い」から一転して、対ロシアの王道エスピオナージ。始めは楽勝かと思われた作戦が実はロシアの手玉に取られていたと分かり、巻き返しを図るが。焦点はMI6の中枢に食い込んだ二重スパイ(モグラ)を狩り出す事。盟友グレアム・シーモアは事の責任を問われて失脚しかねない。MI6とシーモアに腹を立てつつも、友の立場を守るため、ひいてはそれが母国の為になると信じて敢えて煮え湯を飲むガブリエルである。今回はロシアの勝ちなのか。これまで文字通り満身創痍で戦いながら関係を深めてきた
読了日:03月14日 著者:ダニエル シルヴァ
赤の女 上 (ハーパーBOOKS)赤の女 上 (ハーパーBOOKS)の感想
上巻だけ読んでから少し間が開いてしまったので、下巻を読む前に再読です。ガブリエルの冷たい怒りに背筋が寒くなるこのセリフ。「なぜその口を閉じておけなかった?なぜわたしを血祭りにあげるようなまねをした?」 こんなセリフをガブリエルに真顔で言われたら震え上がるわ。「もう少し強い酒はどうだね?」「アセトンをロックで」 酒を勧めるシーモアにこの返し。怒ってる、怒ってる〜😱
読了日:03月11日 著者:ダニエル シルヴァ
ねみみにみみずねみみにみみずの感想
全編、全力のだじゃれ。にカモフラージュされているけど、翻訳に注ぐ硬派な思いと周囲の同業者さんやお弟子さんへの愛にあふれた、東江さんのお人柄全開のエッセイ集。また、編集された越前敏弥さんの、東江さんへの愛もあふれている。後書きは思わず涙がほろり。翻訳業界の師弟関係も若干見えてきた。東江さんごめんなさい。リアルタイムで売り上げと印税に貢献できなくて。今後もできるだけ新本を買うように心がけます。目指せ、翻訳小説市場拡大!(そして、あのシリーズも、このシリーズも、中抜け未訳本や、続刊未訳の出版を希う。)
読了日:03月06日 著者:東江 一紀

読書メーター